【第一章】なぜ動物倫理なのか【はじめての動物倫理学】 

はじめての動物倫理学
目次

第一章 なぜ動物倫理なのか

動物と倫理を結びつけることの違和感

正直、読んでいて「よくわからんな」と言葉がでるくらいによくわからなかったのだが、つまりのところ著者は、仮に私達が「動物と倫理を結びつけることに違和感」を感じているのであれば、それは下記のような領域を含む要素が原因となって違和感を感じているのだろうという話になっている。すべてがこの著書からの要約ではなく、いちいち難しい説明があるのでそれらを解読していく為に、自ら調べた内容も追記されている点に留意願いたい。

また、第一章は、動物倫理の話というよりはこの本を少しでも理解できるようにと「倫理学」の大枠の説明を試みているよう思われる。そのため倫理にあまり触れたことが無い場合には動物倫理の理解云々よりも先に読書の継続を悩む場合もあるかもしれない。私のような単細胞が読むと尚更難しいと感じるたのは正直にお伝えしておく。

  1. 人間中心主義の文化: 多くの文化や社会は、人間が優越している(人間が中心)という前提に基づいる。この人間中心主義の視点から、動物に対する倫理的な考慮は限定的だ。動物は人間の利益や快適さのために利用され、動物の権利や利益は度外視される。この大方ほとんど大半の人間にとっての常識は「動物たちが自己価値を持つ存在であるという認識」と大きく対立することになり違和感が生じる。
  2. 動物殺傷の実態: 動物が食品、衣類、実験などの目的で殺傷される実態が存在していることは周知の事実で、私達人間はそれを当然の権利と認識をしている。そのため、それらを行うことが虐待、あるいは倫理観がないと言われることに対して違和感を生み出す。一方で、肥育場や工場での動物の飼育条件や処遇がしばしば不十分で残酷であるという報告が存在し、そこに私達が一切の改善の必要性すら感じないのであれば、その無慈悲な状況こそが倫理的な観点から動物の苦しみや権利を考慮する必要性を強調している。
  3. 環境への影響: 動物の飼育や畜産は、環境への影響力が強いと言われている。過剰な肉消費が森林伐採や温暖化などの環境問題を引き起こす可能性があり、これに対する倫理的な違和感も考慮される。動物の生産に伴う環境への負荷が増大することは、地球全体の生態系に対する負担となると(一部の人達は)考えている。
  4. 個体の利益と種全体の利益の対立: 倫理的な問題の一つは、個体の利益と種全体の利益の間での対立。一部の動物個体の利益を守ることが、生態系全体や他の動物種に対する脅威を引き起こす場合、どちらの利益を優先すべきかについての難しい問題が発生する。この問題は、倫理的な決定を著しく難しくする。

これらの違和感は、動物と倫理の関連性を考える際に引き起こされるものであり、個々の人によって異なる要因や価値観に影響されることがある。動物と倫理に関する議論は、個人、社会、政府間で進行中であり、動物の権利と福祉に関する倫理的な観点を深めるための重要な過程と言われている。

多様性の尊重から動物倫理へ

「多様性」あるいはダイバーシティと表現されることもあるが、人々が異なる文化や価値観、生活様式、思考の多様性を尊重し、その多様性を通じて動物の権利や倫理的な扱いについて考えることの重要性を強調しているという話のようだ。

この結論についても、やはり私自身には残念ながらしっかりと理解をするに足る教養が足りないようで、いまいちロジックが分からなかった。ただ、要点は以下のどちらかにまでは絞り込めているように思う。(が、自信は全くない)

  1. 一つは、多様性を尊重する世界的な流れがあるのだからその多様性の一つに動物も含めましょうよという話
  2. もう一つは、異なる文化やバックグラウンドを持つ人々が持つ動物に対する倫理的な観点や価値観を尊重し、それを共有し合い、より包括的で持続可能な動物倫理を構築する必要があるよという話

たぶん、上記の2つのどちらかなのだろうと思う。ただしながら、正直な話をすれば動物倫理の理解をしようと思って本を手に取ってみたら多様性の話が出てきたこと自体が青天の霹靂だ。

哲学の一部としての倫理学

「哲学の一部としての倫理学」という文言は、言葉の通りで倫理学が哲学の一分野であることを指している。倫理学は、哲学の中でも特定の領域で、倫理的な問題や倫理的な価値観、行動、道徳的な判断について研究し、議論する学問とのことだ。具体的に言えば、倫理学は以下のようなテーマを探求しているとのこと。

  1. 道徳的価値観: 倫理学は、何が「善」であるか、何が「悪」であるか、または何が「正しい」か、何が「誤り」かについて考える。さまざまな倫理的価値観や規範を分析し、議論する。
  2. 倫理的な理論: 倫理学者は、倫理的な判断を下すための理論的な枠組みやアプローチを開発する。代表的な理論には義務論、功利主義、徳倫理などがある。
  3. 道徳的判断と行動: 倫理学は、個人や社会が特定の倫理的な状況でどのように行動すべきかについて考察し、指導する。倫理学は、個人が倫理的な選択をするための道徳的な指針を提供している。
  4. 社会的な倫理: 倫理学は、社会的な正義、権利、責任、公平さなど、社会全体に関わる倫理的な問題にも焦点を当てている。社会的な構造や法律、政策と倫理的な視点の関係についても研究している。

倫理学は哲学の一分野として位置づけられ、哲学の他の分野との関連性もある。哲学は知識、現実、存在、知性、言語など広範なテーマを扱う学問であり、倫理学はその中でも人間の行動と価値観に焦点を当てている。

倫理規範と法規範

倫理規範と法規範は、行動や社会的な規範に関連する二つの異なる概念。

倫理規範(Ethical Norms)

  1. 倫理規範は、個人やグループが何が「正しい」または「善」であるか、または何が「誤り」または「悪」であるかに関する道徳的な指針や原則。倫理規範は、個人の価値観、信念、道徳的な判断に基づいて形成されることが多く、しばしば個人の内面から来るもの。
  2. 倫理規範は、個人の良心や道徳的判断に影響を与え、行動や決定における方向性を示す役割を果たす。例えば、誠実さ、公正さ、思いやり、誠実さなどの倫理的価値観は、倫理規範の一部とされることがある。
  3. 倫理規範は一般的に法規範よりも柔軟で主観的であり、法的に禁止されていないが倫理的に疑問がある行動に関しても指針を提供している。

法規範(Legal Norms)

  1. 法規範は、社会や国家によって公式に制定された法律や規則に関する規範。法規範は、法律に明確に規定された行動や義務を指し示す。法規範は法律体系の一部であり、法的な制約や義務を強制するための法的権威を持っている。
  2. 法規範は社会の秩序を維持し、個人と社会全体の権利と責任を定義している。法規範に違反する行動は、法的な制裁や罰則を受ける可能性がある。
  3. 法規範は一般的に国や地域によって異なり、法律の種類や内容は文化、政府、歴史によって異なる。法律は立法機関によって制定され、実施されるプロセスを経て公式に変更される。

要するに、倫理規範は個人や社会が良いと考える道徳的な原則に基づいており、法規範は社会的な秩序を維持し、法的な制約を課す法律と規則に基づいている。倫理規範は主観的で柔軟であり、個人の価値観に影響される一方、法規範は公式で法的に拘束力があるもの。

倫理学の区分

既にこの辺りで頭がショートしそうになりながら読んでいるという点についてはあえて言及しておきたい。似たような言葉が多く、一つ一つの厳密な違いも判らないのであまり倫理学の細かい点については飛ばしながら大枠で捉えていった方が良いのかもしれない。いずれにしても現在、私が知ろうと努めている動物倫理は、応用倫理学の一つだそうだ。その上で動物倫理学の主要な論者は、生命倫理学や環境倫理学のように、「自分が依拠する規範倫理学上の立場から議論を展開するのが普通だ」と記載されている。

「普通」だと言われたその「普通」が、さっぱり意味が分からないとそれはそれで結構絶望的な気持ちになるが、グーグル先生にも訪ねながら可能な限り理解に努めてみた。

基本倫理学と規範倫理学(Metaechics vs Normative Ethics)

基本倫理学(Metaethics)

基本倫理学(Metaethics)は、倫理学自体の性質や倫理的な概念の起源、倫理的な言語の意味論など、より抽象的な倫理学の問題に焦点を当てている。例えば、道徳的な価値が客観的か主観的か、道徳的な判断が真実を伴うかどうかなどが Metaethics の関心事。

規範倫理学(Normative Ethics)

規範倫理学(Normative Ethics)は、具体的な倫理的な問題に対処し、何が「正しい」行動かについての倫理的な原則や規範を研究する。応用倫理学は、具体的な道徳的ジレンマに対する解決策を提供することを目指している。

倫理的理論の区分(Ethical Theories)

倫理学は、さまざまな倫理的理論に分けられている。代表的な理論には、功利主義、義務論、徳倫理、個人主義、共感主義などがあるようだ。功利主義、義務論、個人主義辺りは何となく学んだことがあるような気がするが全体的にやはりよくわからん。いずれにしても、これらの理論は、何が「正しい」かや「良い」かについて異なる観点からアプローチし、道徳的な行動の根拠を提供しているものだ。

記述倫理学と応用倫理学(Descriptive Ethics vs. Applied Ethics)

記述倫理学

記述倫理学(Descriptive Ethics)は、人々が実際にどのように道徳的な判断を下し、行動するかを研究している。これは実証的なアプローチで、倫理学の実際の実践に関する観察や研究に基づいている。

応用倫理学

応用倫理学(Applied Ethics)は、具体的な倫理的な問題に焦点を当て、例えば動物倫理など、特定の分野における道徳的な問題に対処する。

比較倫理学(Comparative Ethics)

比較倫理学は、異なる文化や宗教間での倫理的な価値観や規範を比較し、異文化倫理学(Cross-Cultural Ethics)とも呼ばれている。異なる文化間での共通点や相違点を理解し、異文化間の道徳的な対話を促進する。

これらの区分は倫理学が多様なアプローチやテーマを含む学際的な分野であることを示している。倫理学の研究者や哲学者は、これらの異なる区分を組み合わせて、倫理的な問題を深く理解し、倫理的な判断を下すための枠組みを提供することを目指しているそうだ。

しかしながら特に昨今、世界的に活発になっている特定領域の活動、例えばヴィーガンやベジタリアン関連、環境関連、LGBTQ+等ジェンダー関連の問題は概ねこの応用倫理学が関わっているとするならば、多様性を受け入れ相互理解を促進するような世界とはかけ離れているようにも感じるのは私だけだろうか。

規範倫理学の諸学説

規範倫理学は、個々の行為や選択において、何をすべきかについての基準や原理を提供し、行動の指針となる倫理的な理論。これによって、どのような方法で行動すべきか、なぜ特定の行動を選ぶべきか、その目的や意義についての指針を決めることができる。

現代の規範倫理学において、主要なアプローチは以下の3つ。(著書では、3つ、または2つプラス1つという表現をされている。)

  1. 功利主義(Utilitarianism): 功利主義は、行動の善悪をその行為の結果に基づいて評価する。最大多数の幸福や利益をもたらす行動が倫理的に正しいとされる。このアプローチは、行為の結果が重要であり、人々の幸福や利益を最大化することを目指す。
  2. 義務論(Deontology): 義務論は、行動の善悪を行為そのものに基づいて評価する。特定の行為が、道徳的な原則や規則に適合するかどうかが重要。行動の動機や行為自体が正しいかどうかが焦点。
  3. 徳倫理(Virtue Ethics): 徳倫理は、個人の品徳や性格、資質に焦点を当てる。行動の評価は、個人がどのような性格や徳を持っているかに基づいて行われ、倫理的な人格形成が重要視される。

これらのアプローチは、倫理学の三大学説として知られており、それぞれ異なる観点から倫理的な行動を評価している。動物倫理学の文脈では、これらの理論が動物に対する倫理的な取り組みや動物権利にどのように適用されるかが議論されることになる。

功利主義(Utilitarianism)の基本

功利主義(Utilitarianism)は、倫理学の一つの学説で、行動や決定の倫理的な善悪をその結果に基づいて評価する理論。功利主義の基本原則は「最大幸福の原則」または「最大多数の幸福の原則」とも呼ばれ、要約すると以下になるそうだ。

「最大の幸福を最大の数の人々にもたらす行動が最良の行動である。」

この原則に基づいて、功利主義者は倫理的な行動や意思決定を行う。以下は功利主義の基本を説明する要点:

  1. 幸福追求: 功利主義は、幸福や喜び、幸福感を最も重要な道徳的価値と位置づける。この学説において、人々の幸福感や快適さが最大化されることが倫理的な目標とされる。
  2. 結果主義: 功利主義は結果主義の一形態であり、行動の善悪はその結果によって判断される。行動が最大の幸福をもたらすならば、それは良い行動とされ、最大の苦痛や害をもたらすならば、それは悪い行動とされる。
  3. 全人類への配慮: 功利主義は全ての人々の幸福を考慮に入れる。ある特定の個人やグループの幸福だけでなく、社会全体の幸福を最大化しようとする。これは最大多数の幸福を実現しようとする点で特徴的。
  4. 計算と比較: 功利主義者は異なる選択肢や行動の結果を比較し、幸福や苦痛を定量的に評価しようとする。幸福の増加や苦痛の軽減が最も多くの人々にもたらされる行動が最良の行動とされる。
  5. 適用範囲: 功利主義はさまざまな倫理的問題に適用される。個人の行動から政策決定、社会的な規範まで、広範な領域で使用される。

一般的に、功利主義者は道徳的なジレンマに直面した際に、異なる選択肢が最大幸福の原則をどれだけ達成するかを考慮し、その基準に従って最適な行動を選ぶことを目指す。しかし、功利主義には批判や課題もあり、特に個人の権利や正義に関する問題に対処する際に複雑な議論が生じることがある。

義務論(Deontology)の基本

義務論(Deontology)は、行動の善悪を行為そのものに基づいて評価する倫理学の学説。義務論は、行動が特定の道徳的な原則や規則に従っているかどうかに焦点を当てる。この学説の基本原則は、イマヌエル・カントによって発展し、次のように要約される。

「行動の正当性は、行動が遵守すべき普遍的な原則や義務に従っているかどうかに依存する。」

義務論の基本を説明する要点は以下:

  1. 普遍的な原則とカテゴリカル・インペラティブ: イマヌエル・カントは、倫理的な原則が普遍的であるべきだと主張した。彼は「カテゴリカル・インペラティブ」という概念を提唱し、行動が普遍的な原則に矛盾しないかどうかを確認する方法を示した。カテゴリカル・インペラティブは、自己中心的な欲望や特定の状況に依存しない普遍的な命令を表す。
  2. 道徳的な義務と禁止: 義務論は、特定の行動が倫理的な義務に適合する場合、それを正当化し、行動が倫理的な禁止事項に違反する場合、それを非難する。個人の道徳的な義務を遵守することが、倫理的に正しい行動を特徴づける。
  3. 結果に関係ない: 義務論は結果主義とは異なり、行動の結果やその善悪には直接的な焦点を当てない。行動が普遍的な原則に適合するかどうかが評価基準であり、善意で正当な義務を遵守した場合でも、結果が予測できない不幸な結果につながることがあることを受け入れる。
  4. 個人の尊重と普遍性: 義務論は個人の尊重と尊厳を重視し、他人を単なる手段として扱わないよう奨励する。他人を普遍的に尊重し、普遍的な道徳的原則を守ることが倫理的に重要とされている。

義務論は、個人の行動や社会的な規範に関する重要な視点を提供し、個人と社会が倫理的な行動を理解し、実践する際の指針となる。しかし、義務論にも課題や議論が存在し、特定の状況における倫理的な判断の複雑さについての議論が続いているらしい。

徳倫理(Virtue Ethics)の基本

徳倫理学(Virtue Ethics)は、倫理学の一派であり、行動の善悪を個人の性格や美徳に基づいて評価する学説。徳倫理学の基本原則や考え方は以下のようになっているようだ。

  1. 美徳(Virtues):
    • 徳倫理学は、美徳を中心に据えている。美徳は個人の性格や道徳的な質を指し、善い品質や特性を表す。例えば、誠実さ、勇気、寛容さ、正義、思いやりなどが美徳の例。
    • 美徳は個人の性格を形成し、倫理的な判断と行動に影響を与える。徳倫理学は、善い人格形成と美徳の養成を重要視する。
  2. 美徳倫理の起源:
    • 古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、美徳倫理学の創始者とされ、人々が最高の幸福を追求するためには、美徳を養う必要があると考えた。
    • アリストテレスの「ニコマコス倫理学」は、美徳の中庸(バランス)を強調し、極端な性格特性の避けられない傾向から離れた中間の道を提唱した。
  3. 行動の評価:
    • 徳倫理学では、行動の善悪は個人が持つ美徳によって評価される。善意と美徳を持つ人が、適切な美徳を適切な状況で発揮することが重要。
    • 行動が美徳に適合するならば、それは倫理的に正当化され、美徳に反する行動は非難される。
  4. ロールモデルと教育:
    • 徳倫理学は、個人が倫理的な成長と美徳の養成のためにロールモデルや倫理的な教育を通じて学ぶことを強調している。優れた人物や倫理的な模範から学ぶことが奨励されている。
  5. 個人主義と相対性:
    • 徳倫理学は相対性と個人主義を重視。個人の性格や価値観に応じて、適切な美徳が異なる場合があるとのこと。徳倫理学は、絶対的な規則よりも個別の状況と個人の特性を考慮するアプローチになる。

徳倫理学は、他の倫理学の学派と異なり、行動の結果や義務に焦点を当てないため、一部の倫理的ジレンマに対処する際に異なるアプローチを提供するようだ。そうであるがゆえに著者も「今のところ功利主義や義務論と並び立つまでの精緻な理論にはなっていない」と表現される個所もあるが有力な規範倫理学上の立場として今後の展開が注目されるのには変わりないと締めくくられている。

第一章 総括

第一章に関しては、第二章以降の内容の理解を少しでも容易にするための事前知識をまとめているような形だ。そのため倫理学全般の話や倫理学の成り立ちのような話が主となっているため、難しい内容になっている。

倫理学は、内容そのものが難しいというよりもどのように物事を理解すべきかという問いに対する明確な回答が出せない点において、モヤモヤっとした話のように感じてしまう。

いや、出せないと言うよりも人や文化、性別や成長環境などによって違う答えに行き着いて然るべき倫理規定のみを持って、法規定の拠り所としているような話にはならないのか些か不安になるのは私だけだろうか?

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメント一覧 (1件)

コメントする

目次