狩猟と有害駆除
興味深い内容だった。
指定管理鳥獣へ熊を加えることを要請しているタイミングでこのようなニュースは少し不思議に感じたが、どのような特に専門知識や背景事情を知らずに批判をしたところで何も生まないので、状況について細かく考察する必要があるのだろう。
この辺りの記事やニュースをみて、まず考えるのが「狩猟」と「有害駆除」の違いでろうか。最終的に仕留めているのは猟友会に所属しているハンターということになるのは違いはないのであるが、意味合いも、仕留めた後の処理についても大きな違いがあるそうだ。
少々古い記事ではあるが、こちらの記事などは参考になる。
野生動物から受ける人的被害や経済的被害、その他の生態系への影響を懸念し、駆除を進める場合の懸念点というのは、経験を積んだ信頼のおけるハンターの確保やその組織運営に着眼点がいく。行政が考えることなので、当然、その地域に住む人や実際に被害にあっている人や困っている人達からの声が集まり、結果的に対策を取らざるを得ない形ができるというう流れだろう。
また狩猟と駆除の違いについてしっかりと認識をしつつ、全く違う結論に至っているような場合もあるようだ。
こちらのエントリーをしている人は、狩猟者でありジビエを行い、同時にそれらで得た肉等を使ってビジネスを行っている人のようだ。その上で、狩猟には問題が少なく、有害駆除には問題があるという立場をとっておられるようである。
動物倫理的な観点で考えれば、目的や理由の如何に問わず押し並べて動物を殺しているのでNGとなるのであろうが、緊急性が高いと考えられるような熊などの場合にはもう少し理解が得られるのかもしれない。猪や鹿になると、緊急性の度合いが下がるので考え方や議論の矛先はもっと別になるだろうか。
いずれにしても上記の記事のように、有害駆除も、狩猟後に食べるからとか「命をつないでいる」という考え方も、結局は人間の都合であるので、実際問題としてはその違いがあるようでないし、あるとしてもそれぞれの自分の中での正当性の主張がぶつかり合うだけだとは思う。どれだけ頑張って主張をしてみても、厳密に突き詰めていけば自己矛盾が発生するだろう。
でも、マタギの人達は、マタギの人達で全く違った美学をもっている。このような信念というのは、軽はずみに批判をするわけにはいかないと考える。ただ、この動画を見て、狩猟は山の中で行う者で、駆除は山ではないところで行うということを理解できた(厳密にそういう区分けなのかどうかはわからない)。いずれにしてもマタギの人達の考え方を少し知ってみたいと思った人は下のリンク先の動画を見てみてほしい。
このような感じになりそうだ。
目的 | 後処理 | 実行者 | |
猟友会 | ジビエ、食肉、娯楽 | 解体、食べる、不要部分は廃棄 | 狩猟免許所有者 |
有害駆除 | 頭数減少 | 埋める、捨てる | 狩猟免許所有者 |
なるほど、確かに狩猟か駆除かに対しては、本質的な部分をいちいち考えない(考える必要がない)人達にとっては、心情的に考えて善し悪しの判断が大きく分かれるのかもしれない。それはそれでいいだろう。
が、ここで今回の一番最初の話に戻すと、「???」となるのがわかるだろう。
熊の駆除を、倫理なんてものはあまり関係なくとにかく頭数を減らす目的になるのが指定管理鳥獣への指定で、これを要請している段階で、なぜ「猟友会」に自粛を要請し、またさらに「猟友会」も反発をするのか。また有害駆除は継続している手前、頭数を減らすことに対してのブレーキにはなっていないのもわかる。
ということは、あくまでも狩猟をジビエや食肉、その他の理由で熊を狩猟したい人達がいて、それらに対する要請が行われ、その要請を受けた一部の人達が反発をしていることが何となく見えてくるような気がする。
そもそも有害駆除の場合は、国からお金が支払われて行うわけだ。金額が安いとかそういう話はあるにしても何も受け取らずに単に狩猟をするよりは実入りが増えるだろう。その場合は
- 駆除するより狩猟して解体後に売るような流れの方が儲かる??
- 駆除するより狩猟をしたい???(理由はよくわからない)
- 指定駆除認定を受けていない狩猟会所属の一部の人が反発をしている
- マスコミの印象操作
このような感じの理由があるのではないかと推測したくもなるが、いずれにしても狩猟会に自粛要請をかける数字は以前から話し合われていたとなっている。そのため、その後の熊被害の増加や駆除が必要になる頭数のベースは、ここまで被害や問題が大きくなる(認識を持つ)前の状況をもとにして作られていた数字であり、とはいえ決めた数字だからいったんは予定通り自粛要請になったと考えた方が妥当であろう。
どのような状況であったとしても、熊を指定管理鳥獣に指定するのかしないのかという大きな局面である。まずは目の前の問題を一つ一つ解決していくために、くだらない混乱やいざこざは避けてしっかりと足元を固めていく動きをとるべきだろう。
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