さいしょに
サブタイトルは「人と動物の共生すること社会の実現へ」。
3章構成で、一章ではペットの殺処分をめぐる状況と動物愛護法、二章では動物愛護法の解説、三章では動物愛護法の課題が述べられている。
基本的に動物保護活動やシェルター活動をする上で、お気持ち一辺倒で突き進むわけにもいかないし、ビジネス一辺倒で行くわけにもいかないのが現実だとすると、まずは現在の環境の中心になる「動物愛護法」の理解を可能な限りしておく必要がある。
本業のクライアントは動物病院になるわけだが、動物病院からの支援をなくして動物愛護活動というものは成立し得ないと、私は思う。ただ動物病院は営利企業として獣医療を提供しているわけで、片方では対価を得ながら医療行為をしつつ、もう片方では「動物愛護」の名の元に無償の奉仕を行うというのは良いことなのかは私にはわからない。
去勢手術などを含む獣医師による医療行為も、一般の人達のボランティア活動も、それそのものが前提で行われてしまうと決して持続可能な形ではなくなってしまうと思うからだ。他方で、それらの資金を税金等を用いる社会的な負担とすべきか(またはすることができるか)はとても難しい問題だと思う。
動物愛護活動の領域には、まだまだ知らないたくさんの問題があるのはわかっているが、それらすべてを解決できるわけでもないので、現状においては私ができる活動を通じてできる範囲の「何かしらの改善」を模索しながらペットバレーの活動をしていくという点については改めてここで言及したい。
私の動物愛護に関する前提認識
正しいかどうかは置いておくとして、私自身の現在の動物愛護法に関する(限られた)知識と認識は以下のようになっている。
動物愛護法の要点(ESHIKAの認識←これ重要)
基本的な動物の権利保護:
動物愛護法は、基本的な動物の権利を保護するための法律。動物への虐待や苦痛を与える行為の禁止、適切な飼育環境の提供、適切な餌と水の提供などを定めている。その理念そのものが海外からの流入なのだろうと思うが、自らの意思表明ができない動物が主体となって考えられたものではないので、成り立ちそのものがある種の人間のエゴから作られたものだと考えているが実際のところは知らない。国際的な流れの中ではその重要性は良くも悪くも増していると認識している。
犬猫の管理:
飼育動物全般に対しての法律ではあるものの、犬と猫には特別な規定を設けており、飼育登録制度や適切な飼育環境の提供が義務付けられ、また繁殖業者や犬猫その他飼育動物に係る業界・業種に対しても第1種/2種動物取扱事業者としての登録や届出によって規制を強化していく流れがある。
教育と啓発:
動物愛護法は、動物に対する理解と尊重を促進するための教育と啓発活動を奨励しているが、少なくとも私の生活環境周辺ではそのような機会にふれることはほとんどない。意識もせずとも触れる機会が増えれば社会的な浸透も図られると思うが、そうではない現状は地域的な偏りなのかどうかは不明だ。
出入国管理法との連携:
ずっと昔にニュースで聞いたことがずっと記憶に残っているが、日本は動物虐待の前科者に対して出入国管理法に基づく入国拒否措置が導入されているはずだ。これは外国居住者が日本への入国する際に、動物虐待の前科がある場合には入局を拒否できるという点で動物虐待行為への抑止力として機能することが期待されているとされた。他方で、動物虐待的な行為は、国内でも数多く確認できる点から考えると、出入国管理の云々以前に、動物虐待の前科者のチェックとそれに付随する形で動物愛護的観点から国内インフラで情報活用できる形を考えた方がより合理的だとは思う。他方で、個人の権利や個人情報の管理上、例えば性犯罪者の情報プラットフォーム並みに扱いべきなのかどうかは私には判断ができない。
動物愛護法の課題(ESHIKAの認識←これ重要)
法執行の強化:
動物愛護法の施行において、警察や自治体のリソースが不足していることが課題。法執行の強化や虐待事件の迅速な対応が求められている一方で、動物の扱いや所有権に関する難しさも存在していて単純に法制定と法執行を強化すればよいのかは合理性も含め慎重な判断が求められる。
動物福祉規制の強化:
動物愛護法の規制は逐次強化されているが、一部の人々はまだ不十分と考えており、より厳格な規制が求められている。例えば、動物実験の規制や、ペット業者に対する規制の強化が議論されているのは事実だ。より多くの国民や社会的理解を得ながら進められているものではなく、あらゆる規制が強化されればそれらは結果的に多くの国民生活に負担としてのしかかってくるであろうことは容易に想像できる。ここでも多くの人が納得できる根拠やその先に見えるよりよい社会が何を意味するのか明確にしていく必要があるだろう。
教育と意識改革:
動物愛護意識の向上と教育が、動物虐待を減少させるために不可欠であることは周知の事実だろう。これには学校教育やメディアにおける動物愛護に関する情報発信が含まれるが、一方で学校教育やメディアにおける情報発信が統制の取れた一貫した社会学の上になりたっているのかは不明だ。発信者や教育者によって認識や考えの土台がお隣、前提となる共通認識の詳細な確認なしに同じ言葉で議論や教育を進める必要があるはずだ。
野生動物保護:
野生動物に対する保護も重要な課題。人間の活動によって野生動物の生息地が脅かされ、野生動物が人間との衝突にさらされている。野生動物の保護に関する法律や政策の改善が必要だが、例えば人間の生息域が野生動物に脅かされているのが現状の問題でも顕著で、この様な際の駆除にすら動物愛護団体からのクレームや嫌がらせが行われる場合もある。実被害を被る人々と、実被害は受けないが動物愛護をうたう人々の乖離は大きく、これらの問題の社会的合意が現実的に可能なものか疑わしいと私が思う理由でもある。
動物愛護以外の重要課題との優先順位
例えば、我々日本国民の多くは年々生活が厳しくなっていると感じる人も増えているといわれている。国民の生命と財産、生活をより良いものとしていくことに過去20年以上も失敗している状況下において、動物愛護を推し進めていく必要性や合理性がそこにあるのだろうか?と一歩立ち止まって考える必要はないのだろうか?
私自身にその問いへの明確な答えを用意する能力や知識はない。ただ、理論的に考えると動物愛護と国民の生活水準に関連する問題は、様々な要因により影響を受けており、簡単な答えは難しいのだろうと思う。以下は、この問題に関する幾つかの考え。
動物愛護と国民の生活水準の関係:
動物愛護と国民の生活水準は直接的には関連していないように見えるが、社会全体の価値観と規範には関連している。動物愛護に取り組むことは、文化的な価値観や倫理観を表す一つの側面であり、これに対する社会的な関心が高まることは、より良い社会を築くための一環と考えることは出来る。ただ、そう考えると「社会的な価値観」はその土台となる文化的、民族的な違いもしっかりと取り込んだ文化的・民族的な価値観の多様性として普及されるべきだが、動物愛護の哲学は海外で生まれたものをベースにし、参考にし、日本社会に導入されてきているわけで「よりよい社会を築くための一環」と単純にとらえるには無理がある。欧米型の社会こそがよりよい社会だと考える人にとっては話は違うのかもしれないが。
資源配分とバランス:
国の資源は限られており、国としての問題を解決していく優先事項を設定する必要がある。では動物愛護に関する問題の解決はこの優先順位の中でどこに位置するのか、また例えば国民生活の向上という課題との順位差はどのようなものか?という観点は常に国民一人一人が考え、判断していく必要があるわけだ。現在の動物愛護界隈の考え方は、きっと「動物愛護と国民の生活水準向上は相互に排他的なものではないから政府や社会は、複数の課題に対処し、資源を適切に配分する方法を模索すべき」といった考え方をベースにしているのだと思う。あるいはそれすらかっ飛ばして「動物愛護はその他の課題と対比しても喫緊で最優先に解決すべき課題だ」と考えているのかもしれない。いずれにしても、限りある資源をどのように配分し、動物愛護を含むあらゆる社会問題の解決をどのようにしていくのか?を一人一人が考える必要がある。
教育と意識改革:
動物愛護を推進することは、教育と意識改革の一環として捉えることもできる。これはここに述べた考え方の中では社会に受け入れられやすいという意味でだいぶ実用的というか現実的な気はする。動物愛護に取り組むことは、倫理的な観点からだけでなく、持続可能な社会や環境にも貢献するという視点を伝えれば、細かいことはよくわからないけど何となく正しいことを言われているような気がする人は大半のはずだ。人々の倫理観や行動が変わることは、社会全体の進化につながる可能性がある。ただし、教育を受けようが意識改革をしようが結局人間は、自分自身の実生活上にある接点を基準に物事を考える傾向が強いので食肉という側面以外で動物との接点がほぼない人にとっては全く持って関心ごとでもなく優先順位も低いものとなってしまうことは否めない。(都心住まいで、ペットは飼わず、動物との関わりがほぼない人達等)
政策のバランス:
政府や立法機関は、国内外の様々な問題に対処するために政策を策定する必要がある。動物愛護を推進する一方で、国民の生活水準向上、経済発展、健康ケア、教育などの他の重要な課題にも取り組む必要があるわけだ。政策のバランスと優先順位の設定が重要だ。
総合的に考えると、動物愛護は社会の一部として重要であり、その意識を高める必要性があるというのが動物愛護を推進したい人々の総意なのかもしれない。ただし、国家的な資源の配分や政策決定においてはバランスを取り、国民の生活水準向上にも努力を続ける必要がある点においては、自分達が成し得たい社会の実現への優先順位は相対的に高く持っている人達が政策制定等にも携わっているという前提は踏まえたうえでしっかりとした議論が必要だと思う。
第一章 ペットの殺処分をめぐる状況と動物愛護法
動物の殺処分に対する問題意識の高まりと共に増えた社会活動の成果や、人と動物が共生する社会の実現へ向けた課題やテーマを明らかする旨を最初に述べられている。
1ページ目から「む…」となってしまったのは以下の文章だ。
動物であっても、その生命は尊重され、大切にされなければなりません。それは、動物たちのため、というだけではなく、動物とのかかわりを避けては成立し得ない私たちの社会を健全なものにしていくためにも、大変重要なことと言えるでしょう。なぜなら、同じ社会の中で生きる動物たちを単なるモノとしか見ることができないとすれば、人同士の関係においても、立場の強弱にかかわらず、互いの価値や存在を認める尊重し合う、豊かで成熟した社会を創っていくことは難しいといえるからです。
[動物愛護法入門 P1より抜粋]
内容に同意できないわけではなく、以下2つにおいて社会に浸透しにくい理由が垣間見える気がした。
ペットを飼育していない人は動物との関わりを意識しない
文中では、「私たち人間は、動物とのかかわりを避けて成立しない」と当たり前のように書かれているが、動物を飼育している人達以外に動物との関わりを意識して生活をしている人は少ないと私は考えている。
日常生活においては食肉が当たり前になっている現代社会においては、食べでいる動物について意識しろと言われても難しいとも思う。
その上で「動物とのかかわりを避けては成立し得ない私たちの社会」と言われてもそのまま受容できる人がどれほどいるのかは不明だ。一方で、わざわざこの本を手に取って読む人達は大前提として動物愛護に興味がある人達だ。
動物愛護に関してメディアなどを通じて社会に訴えかける時には、そもそも興味がない人達が大多数いるという前提を持ち、丁寧な論理構成を心掛ける必要があるという点は留意したいところだ。
論理の飛躍
「社会の中で生きる動物たちを単なるモノとしか見ることができないとすれば、人同士の関係においても、立場の強弱にかかわらず、互いの価値や存在を認め尊重し合う、豊かで成熟した社会を創っていくことは難しい」と言えるのか私にはわからなかった。
人が動物をモノとしてみる行為の変化によって、動物からみた人の存在や価値に変化を望むのは非現実的であり、その非現実的な道理をもって人同士の営みに変化をもたらすと信じるのは難しいだろう。そのように考えると、人間が動物をモノとしてみることをやめられたとしても、その結果として人間同士が互いの価値や存在を認め尊重し合う成熟した社会を創るきっかけになることはないはずだ。
人間同士の間で発動されるべき模範的な「互いの価値や存在を認め尊重しあう」行為ができていないことは、あらゆる価値観や文化・宗教的な違い、環境問題やジェンダーの問題、それらに準ずる活動への理解無理解に対する双方向の不寛容が顕著に表れている昨今においては周知の事実といえよう。これらの問題の解決の糸口として、「動物をモノとしてみないこと」が実際問題としてどのように人間に作用するのかがよくわからない。
この点についても、前述の通り「特定の領域に対して主張をするグループ」が、巻き込むべき社会に向き合って話をする際の前提を正しく認識しつつ、同時に動物愛護に関する知識や哲学を習得していく必要性を強く感じるのである。
殺処分
殺処分に関する規定は複数ある。
以前は法律上、家畜伝染病に罹患した動物を感染拡大や副次的被害の防止を目的として殺処分を所有者に命ずることができるとする家畜伝染病予防法に規定された限定的なものであったが、近年では解釈が拡大されていて「不要な、もしくは人間に害を及ぼす動物を行政が殺害すること」として動物愛護法に基づくものになっている。
犬の殺処分は狂犬病予防法で規定され、猫については法律がないが動物愛護法に基づく環境省の告示「犬及び猫の引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置」(2006年)の処分に関する項目で「保管動物の処分は、所有者への変換、飼養を希望する者への譲渡し及び殺処分とする」と記述されている。
行政や動物愛護にかかわる人々の絶え間ない努力により殺処分の状況は大きく改善されているが、「殺処分がなくなることを目指して」いるため、改善傾向ではあるがゴールまではまだまだ長い道のりになるようだ。
特に問題なのは猫の殺処分で、飼い主の問題のみならず猫の繁殖力の強さにも起因している。飼い主不在の猫が保健所に持ち込まれ、そのまま殺処分となってしまうケースが多いそうなので、猫の殺処分問題の多くは所有者不明の猫の出産ということになる。
動物愛護法の制定と改正の経緯
第一章の2で動物愛護法の制定と改正のこれまでの大きな経緯が以下のようにまとめられている。これを見る限り、動物を保護するための法律というのは日本においては決して古いものではない。一番最初の制定は1973年だが、1999年12月の名称変更までに何があったかはよくわからないが、バブル景気後退期と言われる90年代前半を経て景気の悪化と並走する形で動物愛護法の改正は行われてきているわけで、相関性はないのだろうが好景気から不景気に変わっていく社会情勢の中で動物の扱いなども大きく変動したのかもしれない。
1973年9月 | 「議員立法により動物の保護及び管理に関する法律」の制定 |
1999年12月 | 「動物の愛護及び管理に関する法律」に名称変更 |
2000年12月1日 | 「動物の愛護及び管理に関する法律」施行 |
2005年6月 | 「動物愛護法の一部を改正する法律」(法律第68号)公布(動物取扱業の規制強化、特定動物の飼育規制の一律化、実験動物への配慮、罰則の強化など) |
2006年6月1日 | 「動物愛護法の一部を改正する法律」施行 |
2012年9月 | 「動物愛護法の一部を改正する法律」(法律第79号)公布(動物取扱業の適正化、終生飼養の明文化、罰則の強化など) |
2013年9月1日 | 「動物愛護法の一部を改正する法律」施行 |
これらの経緯の中でも重要なのは2012年の動物取扱業に対する規制強化の実現。この規制強化の中で、特に犬猫の繁殖や販売に関する法律が肝になっている。その後2019年の動物愛護法改正によりさらにいくつか重要な課題の克服された。
動物愛護法に関するさまざまなルール
ここには動物愛護法に限定するものではなく法律全般の一般的な話がまとめられている。
- 行政が定立する法
- 行政規則
- 条例
行政が定立する法
行政が法律を運用する際、定立する法を総称して「命令」といい、その中にも政令や省令がある。法律が規定しきれなかった細かい事柄を明らかにするために内閣が制定するものを「政令(施行令)」、行政の具体的な手続きの方法や基準を定めるために各省の大臣が制定するものを「省令(施行規則)」と呼ぶ。
基本的に、一度法律として制定したものを変更する場合はどんな些細なことでも国会審議で可決しなければならないため、毎年変更するような数値や、細かい事項については政令や省令で定めることによって煩雑な手続きを回避するという運用がされているようだ。そのため、動物愛護法が実際にどのように運用されているかを確認するためには、内閣によって定められる「動物の愛護及び管理に関する法律施行令」や環境大臣によって定められる「動物の愛護及び管理に関する法律施行規則」まで確認する必要があるということだ。
行政規則
行政規則とは、行政立法のうち、特に法規の性質を持たないものをいう。その中で行政機関がその意思や事実を広く一般に公示する方式として「告示」がある。
動物愛護法においては、まず法律として「動物の適正な飼養および管理を確保するために飼い主等の責務」を定め、さらに、「環境大臣は動物の飼養・保管に関しての基準を定めることができる」とされている。
この法律に基づいて、「家庭動物・展示動物・産業動物のそれぞれについての飼養および保管に関する基準」と「実験動物については飼養および保管並びに苦痛の軽減に関する基準」が、告示により定められている。
告示以外にも、監督行政庁が法律の解釈や裁量判断の具体的指針を示し、行政上の扱いの統一を図るために行う命令を「通達」、通達に関係する一般的な周知事項を「通知」という。
条例
地方公共団体の議会が地方自治行政を実現していくうえで必要であると判断した場合に、自主的に制定する法規を「条例」という。
これは地域によって動物と社会の関りが異なるので、それぞれの地域事情に応じてルールを定め動物との共生を実現できるようになっている。
第2章 動物愛護法の解説
第2章でかなりのページを使って動物愛護法の解説を行われている。解説について私が説明できるほどの知識はないので、その全ての解説内容についてはここでは割愛する。ペットバレーが関連する領域についてのみ抜粋の上、備忘録としておきたい。
動物愛護法の考え方・理念
目的
制定当初の動物愛護法は大きく2つの柱に大別される。
- 国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資する
- 動物による人の生命、身体及び財産に対しする侵害を防止する(動物の虐待防止や適正な飼養、危害や迷惑を防止するための動物の適切な管理)
これら2つの柱は制定以降、現在も基本的には維持されていて、2012年の動物愛護法改定で、上記の目的を達成するための手段として「動物遺棄の防止」「動物の健康及び安全の保持等」が追加。さらに目的に「生活環境の保全上の支障の防止」が追加され、「人と動物の強制する社会の実現」が最終的な目的であると明記され、人間の為だけの法律だった動物愛護法が、2012年の改正により人間と動物の為の法律になったという解釈が可能になった重要な転換期と言えそうだ。テストに出そうなので記憶しておきたい。
対象となる動物
動物愛護法の対象となる動物は法律上明記されていない。明記される必要がない、と考えるのかと思ったらどうやらそうではないようで、動物愛護法1条の目的規定には、「人とのかかわりがある動物を想定している」ことから、対象動物は、純粋な野生状態の下にある動物は含まれておらず、飼養動物全般が対象と考えられるそうだ。
個人的には、「動物」愛護と聞くと、飼育動物か野生動物かに関わらず全ての動物が対象となっていると思っていたがどうやら明確な線引きがあるようだ。
大別すると「飼養動物」と「野生動物」に分かれ、飼養動物の中で①家庭動物②展示動物③実験動物④産業動物の4つに分類されている。
家庭動物
家庭動物とは、愛玩動物または伴侶動物(コンパニオンアニマル)と家庭等で飼養・保管されている動物、情操の涵養や生態観察の多面い飼養・保管されている動物。全てのペットはここに含まれることになる。
言葉の定義は難しい。家庭動物という表現は一般的に使われることはないと思うのだが、(室内・室外にかかわらず)家庭で飼養される「ペット」「愛玩動物」「伴侶動物」は家庭動物に含まれるようだ。
展示動物
- 【動物園動物】動物園、水族館、植物園、公園等で飼養・保管
- 【触れ合い動物】人との触れ合いの機会提供、興行または客よせを目的に飼養・保管
- 【販売動物】販売、販売の為の繁殖等を行うために飼養・保管
- 【撮影動物】商業的な撮影に飼養したり提供したりするために飼養・保管
実験動物
実験等での利用のために施設で飼養・保管している哺乳類・鳥類・爬虫類に属する動物
産業動物
産業等での利用のために、飼養・保管している哺乳類・鳥類に属する動物
基本原則
(基本原則)
第2条 動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。
2. 何人も、動物を取り扱う場合には、その飼養又は保管の目的の達成に支障を及ばさない範囲で、適切な給餌及び給水、必要な健康の管理並びにその動物の種類、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境の確保を行わなければならない。
動物愛護法 第1章 (基本原則)第2条より
動物愛護法2012年改正で、上記基本原則の2が追加され国際的な動物福祉の基本原則「5つの自由」のうち「恐怖や不安からの自由」を除く4つの自由の趣旨が明記されたと言われている。
5つの自由
- 飢えと渇きからの自由(解放)
→きれいな水や栄養的に十分な食餌が与えられていること - 肉体的苦痛と不快からの自由(解放)
→適切な環境下で飼育されていること(清潔な状態の維持、危険物の有無、風雷雨や炎天を避けられる屋根や囲いの場所、快適な休息場所) - 外傷や疾病からの自由(解放)
→痛み、外相、疾病の徴候に基づく適切な治療が行われていること - 恐怖や不安からの自由(解放)
→恐怖や精神的な苦痛(不安)の徴候をなくすか軽減すること - 正常な行動を表現する自由
→正常な行動を表現するための十分な広さが与えられていること(動物が危険を避けるための機会や休憩、習性に応じた群れまたは単独での飼育)
大体この辺りまでで、これまでの大まかな推移とベースとなる基礎知識の一部を理解できる。ここ以降、第2章の4「基本指針と推進計画」からは、動物愛護法に沿ってより細かい説明がなされるのだが、全てをここに備忘録とするわけにもいかないので、大部分を割愛したい。
第2種動物取扱業
第2章の大部分を割愛しようとした(実際にほとんど割愛する)が、現在、茨城県龍ヶ崎市に作ろうとしているペットバレーは動物保護シェルターになるので、第2種動物取扱業に当たる。そのため、シェルター活動を考えている人達が情報収集をする際に、このサイトにたどり着けるように情報の記載をしておくことにする。いや、寧ろ私自身がしっかりと第2種動物取扱業について理解するためにここに記載しておく(こっちの方がよっぽど大事)。
第2種動物取扱業者の規定は2012年の動物愛護法改正のタイミングで設けられ、その趣旨は営利性のない動物の取扱いについても不適正な飼養が見られることから、都道府県等はその状況について把握し、指導を行うことが必要とされたことにある。
第2種動物取扱業者とは
飼養施設を設置して動物の取扱業を行おう人が対象となり、第1種動物取扱業には該当せず、その上で取り扱う動物の数が一定数以上である者が対象となる(動物愛護法24条の2の2)。
飼養施設
「飼養施設」は、人の居住する部分と区別できる施設でなければならない(施行規則10条の5第1項)。一時的に委託を受けて動物を飼養・保管する場合の施設は、この飼養施設には当たらない(同条項)。専用の飼養施設を有する場合に限らず、飼養のための部屋を設けたり、ケージなどによって飼養場所が区分されていたりする場合も、人の居住する部分と区別できる施設を有していると言える。(環境省通知「動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律の施行について」(2013年5月10日)環自総発第1305101号。
最初の文章を読んだとき「マジか!?」と一瞬ドキっとした。なぜならペットバレー動物保護施設は、常駐可能となるように一人住み込みが出来る部屋を用意してそれ以外の部屋(トイレやお風呂、台所を除く)は全て大きくスペースを確保しケージを24個分(予定)確保するつもりであった。最後の文章で問題ないことが分かって一安心だ。
動物の取扱業を行おうとする者
「動物の取扱業を行おうとする者」とは社会性をもって、一定以上の頻度または取扱量で事業を行おうとする者。営利目的の場合は第1種動物取扱業となるので、第2種動物取扱業は非営利目的に限られることになる。
業種 | 業の内容 | 該当する業者の例 |
譲渡し | 動物を無償で譲り渡す | シェルター等を有し、譲渡活動を行う動物愛護団体、里親探しの譲渡ボランティア等 |
保管 | 保管を目的に顧客の動物を預かる | 非営利のペットシッター等 |
貸出し | 愛玩、撮影、繁殖その他の目的で動物を貸し出す | 非営利のペットレンタル業者等 |
訓練 | 顧客の動物を預かり訓練を行う | 盲導犬などを飼養する団体等 |
展示 | 動物を見せる(動物との触れ合いの提供を含む) | 公園などで触れ合い活動を行う団体、アニマルセラピーのボランティア等 |
取り扱う動物の数が一定以上であること
小規模事業者への配慮から動物の数の下限を設け、下限よりも少ない動物の数を扱う場合には届出不要になっている。「小規模事業者」という扱いよりは、個人的な活動をしているような人向けと考える方がよさそうなのでペットバレーとしてはしっかり届出をするつもりだ。
区分 | 合計数 | 根拠規定(施行規則10条の5第2項) | 動物種 | 該当する動物の例 |
大型(頭胴長・全長おおよそ1m以上) | 3頭以上 | 1号 | 哺乳類 | ウシ、シカウマ、ロバ、イノシシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等、特定動物 |
大型(頭胴長・全長おおよそ1m以上) | 3頭以上 | 1号 | 鳥類 | ダチョウ、ツル、クジャク、フラミンゴ、大型猛禽類等、特定動物 |
大型(頭胴長・全長おおよそ1m以上) | 3頭以上 | 1号 | 爬虫類 | 特定動物 |
中型(頭胴長・全長おおよそ50cm~1m) | 10頭以上 | 2号 | 哺乳類 | 犬、猫、タヌキ、キツネ、ウサギ等 |
中型(頭胴長・全長おおよそ50cm~1m) | 10頭以上 | 2号 | 鳥類 | アヒル、ニワトリ、ガチョウ、キジ等 |
中型(頭胴長・全長おおよそ50cm~1m) | 10頭以上 | 2号 | 爬虫類 | ヘビ(全長おおよそ1m以上)、イグアナ、海ガメ等 |
小型(頭胴長・全長おおよそ50cm以下) | 50頭以上 | 3号 | 哺乳類 | ネズミ、リス等 |
小型(頭胴長・全長おおよそ50cm以下) | 50頭以上 | 3号 | 鳥類 | ハト、インコ、オシドリ等 |
小型(頭胴長・全長おおよそ50cm以下) | 50頭以上 | 3号 | 爬虫類 | ヘビ(全長おおよそ1m以下)、ヤモリ等 |
大型+中型 | 10頭以上 | 4号 | 哺乳類・鳥類・爬虫類 | 上記のとおり |
大型+中型+小型 | 50頭以上 | 5号 | 哺乳類・鳥類・爬虫類 | 上記のとおり |
※同一の動物種による大きさの違いは考慮しない
除外事由
災害時等に一時的に国や地方公共団体の職員が動物を取り扱う場合、またはその他の法律に基づいて動物を取り扱うことが規定されている場合などは第2種動物取扱業者には該当しないことになっている。(施行規則10条の5第3項各号)
主体 | 取扱内容 |
国・地方公共団体の職員 | 非常災害のために必要な応急措置としての行為として動物の取扱いをする場合(1号) |
国・地方公共団体の職員 | 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律の規定に基づく業務として動物の取扱いをする場合(9号) |
国・地方公共団体の職員 | 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律の規定に基づく業務としてに伴って動物の取扱をする場合(10号) |
国・地方公共団体の職員 | 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律の規定に基づく業務として動物の取扱いをする場合(11号) |
警察職員 | 警察の責務(警察法2条1項参照)として動物の取扱いをする場合(2号) |
自衛隊員 | 自衛隊の施設、部隊、機関の警備に伴って動物の取扱いをする場合(3号) |
家畜防疫官 | 動物検疫所の業務(狂犬病予防法、家畜伝染病予防法、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律参照)のために動物の取扱いをする場合(4号) |
検疫所職員 | 検疫所の業務(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律参照)のために動物の取扱をする場合(5号) |
税関職員 | 税関の業務(関税法参照)として動物の取扱いをする場合(6号) |
地方公共団体の職員 | 法の規定に基づく業務として動物の取扱いをする場合(7号) |
地方公共団体の職員 | 狂犬病予防法に基づいて犬を抑留する場合(8号) |
国の職員 | 少年院法、婦人補導院法、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律の規定に基づく業務として動物の取扱いをする場合(12号) |
第2種動物取扱業の届出
届出制の趣旨
第2種当物取扱業を行う場合は、飼養施設がある都道府県知事等に届出をする必要がある(動物愛護法24条2の2)。登録制の第1種動物取扱事業者に加えて2012年の動物愛護法改正のタイミングで第2種動物取扱事業者を届出制とし規制の対象とした経緯がある。先々にはより厳格な規制の対象となる可能性を残しつつ、現状においては、形式的な届出書に記載漏れなどがなければ受理される形。
第2種動物取扱事業者だから安心だね!とはならないという点を十分に留意する必要があるということだ。
届出手続
第2種動物取扱業は、種別ごと、飼養施設を設置する場所ごとに、その所在地の都道府県知事等に届け出なければならず、届出書に必要な事項を記入して添付書類と一緒に都道府県知事等に提出する。(動物愛護法24条の2の2)
届出事項
第2種動物取扱業は次の事項を記載して届出書を提出する必要がある。(動物愛護法24条の2の2各号、施行規則10条の6第4項)
- 個人の場合は氏名・住所、法人の場合は名称・住所・代表者の氏名(1号)
- 飼養施設の所在地(2号)
- 行おうとする第2種動物取扱業の種別(譲渡し、保管、貸出し、訓練、展示またはその他の取り扱いの別)、その種別に応じた事業の内容・実施の方法(3号)
- 主として取り扱う動物の種類・数(4号)
主として取り扱う動物の種類について、犬猫など取り扱う動物が具体的にわかる一般名または種名を記載。第2種動物取扱業は取り扱う動物の下限を設定してあり、それを下回る場合には届け出が不要。そのため、下限を超える可能性がある場合にはあらかじめ届出をする必要があり、記載する予定頭数も上限値を記載。「主として」については、大型動物と特定動物については年間1頭以上、それ以外の動物については年間2頭以上の取扱いを行う動物を記載。 - 飼養施設の構造・規模(5号)
具体的には、飼養施設の建築構造(木材、鉄筋コンクリート造などの別)、延べ床面積、敷地面積、床面・壁面の材質、設備の種類等を記載 - 飼養施設の管理の方法(6号)
- 事業の開始年月日(7号、施行規則10条の6第4項1号)
- 飼養施設の土地・建物について事業の実施に必要な権原を有する事実(7号、施行規則の10条の6第4項2号)
届出は、環境省ホームページ(「第2種動物取扱業者の規制」のページ)にある所定の様式(施行規則10条の6第1号・様式第11の4)の原本1通、その写し1通を提出する。
添付書類
届出書には、次の書面を添付する必要がある。(動物愛護法24条の2の2、施行規則10条の6第2項)。
- 法人の場合、登記事項証明書
- 次の設備などの愛知を明らかにした飼養施設の平面図、飼養施設の付近見取り図(
- ケージ等
- 給水設備
- 消毒設備
- 餌の保管設備
- 清掃設備
- 遮光のため、または風雨を遮るための設備
- 訓練場(飼養施設において訓練を行う訓練業を行おうとする者に限る)
- 排水設備(あれば)
- 洗浄設備(あれば)
- 汚物、残さ等の廃棄物の集積設備(あれば)
- 空調設備(野外設備を除く)(あれば)
届出を怠った場合、虚偽の届出をした場合
第2種動物取扱業に該当するものが届出をしない、あるいは虚偽の届出をした場合は30万以下の罰金に処せられる(動物愛護法47条1号)。違反者が法人の役員や従業員である場合は、その法人も罰金に処せられる(同法48条2号)。
第2種動物取扱業者の責務
適正飼養の義務
第2種動物取扱業者は、適正飼養の責務が課せられるため取り扱う動物の管理方法などについて次の基準を守る必要がある(動物愛護法24条の4,21条1項、施行規則10条の9)。この責務は、動物の健康・安全を守り生活環境の保全・維持に問題が生じることを防ぐことが目的になっている。
- 譲渡業者(届出をして譲渡業を行う者)の場合、譲渡しをしようとする動物について、その生理・生態・習性等に合致した適正な飼養・保管が行われるよう、譲渡しにあたって、あらかじめ、次の動物の特性や状態に関する情報を譲渡先に対してい説明すること
- 品種等の名称
- 飼養または保管に適した飼養施設の構造、規模
- 適切な給餌・給水の方法
- 適切な運動・休養の方法
- 遺棄の禁止その他当該動物に係る関係法令の規定による規制の内容
- 譲渡業者の場合、譲渡するにあたって、飼養・保管をしている間に疾病などの治療、ワクチンの接種などを行った動物について、獣医師が発行した治療、ワクチンの接種等についての証明書を譲渡先に交付すること。また、その動物を譲渡した者から受け取った疾病などの治療、ワクチンの接種等に係る証明書がある場合には、これも併せて交付すること。
- 届出をして貸出業を行う者の場合、貸出しをしようとする動物の生理・生態・習性等に合った適正な飼養・保管が行われるように、貸出しにあたって、あらかじめ、次の動物の特性・状態に関する情報を貸出先に対して提供すること
- 品種などの名称
- 飼養・保管に適したい飼養施設の構造・規模
- 適切な給餌・給水の方法
- 適切な運動・休養の方法
- 遺棄の禁止その他当該動物についての関係法令の規定による規制の内容
- ①~③のほか、動物の管理の方法等に関し環境大臣が定める細目を遵守すること(※「細目」とは、2013年環境省告示「第2種動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目」のこと。
条例が制定されている場合
都道府県等は、地域の条件などをもとに独自の条例を定めることがある(動物愛護法24条の4・21条4項)。この条例制定が行われた都道府県に届出をしている第2種動物取扱業者はその条例を守らなければならない。
適正飼養の義務に違反した場合
勧告、命令、罰則
第2種動物取扱業者が適正飼養の義務に違反している場合、都道府県知事等は、期限を定めて、動物の管理方法を改善するように勧告することができる(動物愛護法24条の4・23条1項)。勧告に従わない場合は勧告に従うように命令(動物愛護法24条の4・23条3項)、さらに命令に従わない場合は30万以下の罰金に処せられる(動物愛護法47条4号・48条2号)
報告、立入検査
第2種動物取扱事業者が適正仕様の義務に違反している場合、都道府県知事等は飼養施設の状況や動物の管理方法の報告を求めたり、飼養施設への立ち入り検査をすることが出来る(動物愛護法24条の4・24条1項)。
報告をしない、虚偽の報告をする、検査を拒む、検査を妨げる等の行為は、30万以下の罰金に処され違反者が法人の役員や従業員の場合は、その法人にも罰金に処される(同法48条2号)
変更の届出
変更から30日以内に届出が必要な場合
内容
第2種動物取扱業者は次の3つの変更があった場合には、変更から30日以内に都道府県知事等に届け出が必要になる(動物愛護法24条の3第2項)。
- 個人の場合は氏名・住所、法人の場合は名称・住所・代表者の氏名の変更があった場合
- 飼養施設の所在地の変更があった場合
- 届出をした飼養施設の使用を廃止した場合
届出を怠った場合、虚偽の届出をした場合
上記の変更届出を怠った場合や虚偽の届出をした場合、20万以下の過料に処せられる(動物愛護法49条1号・24条の3第2項)
その他変更の届出が必要な場合
原則
以下、その他、第2種動物取扱業者が変更をする場合に届出をする必要があるもの。届出は変更前に必要。
- 行おうとする第2種動物取扱業の種別(譲渡し、保管、貸出し、訓練、展示またはその他の取扱いの別)、その種別に応じた事業の内容や実施の方法について変更があった場合
- 主として取り扱う動物の種類、数の変更があった場合
- 飼養施設の構造・規模の変更があった場合
- 飼養施設の管理の方法の変更があった場合
- 事業の開始年月日の変更があった場合
- 飼養施設の土地・建物について事業の実施に必要な権原を有する事実
例外
上記の原則に当てはまるものの、以下にあげるような「変更が軽微なもの」の場合は例外的に変更の届出は不要となる(動物愛護法24条の3第1項ただし書、施行規則10条の7第2項)
- 主として取り扱う動物の種類・数の減少で、飼養頭数の下限を下回らないもの
- 飼養施設の規模の増大で、その増大する部分の床面積が、第2種動物取扱業の届出をした時から通算して、その届出時の延べ床面積の30%未満であるもの
- 届出の添付書類のうち仕様施設の平面図、飼養施設の付近の見取り図に掲げる設備などの変更であって、その増設、配置の変更、現在の設備等と同等以上の機能を有する設備等への改設であるもの
届出を怠った場合、虚偽の届出をした場合
届出を怠った場合、虚偽の届出を行った場合は30万以下の罰金に処される(動物愛護法47条1号)。違反者が法人の役員や従業員の場合はその法人も罰金に処される(同法48条2号)。
廃業などの届出
内容
第2種動物取扱業者に以下の事由が生じた場合、その日から30日以内に届出者として定められている人が都道府県知事等に届け出る必要がある(動物愛護法24条の4・16条1項~4項)
- 死亡した場合(届出者:その相続人)
- 法人が合併により消滅した場合(届出者:その法人の代表者であった者)
- 法人が破産手続き開始の決定により解散した場合(届出者:その破産管財人)
- 法人が合併・破産手続き開始決定以外の理由で解散した場合(届出者:その清算人)
届出を怠った場合、虚偽の届出をした場合
廃業の届出を怠ったり、虚偽の届出をした場合は20万以下の過料に処される(動物愛護法49条1号)。廃業の届出がない場合、都道府県知事等は第2種動物取扱業者に対して必要な報告を求めたり、飼養施設に立ち入り検査をすることが可能(動物愛護法24条の4・24条)。この報告や検査の妨げなどをした場合、違反者は30万以下の罰金に処される(同47条3号)。違反者が法人の役員や従業員の場合は、その法人も罰金に処される(同48条2号)。
第2種動物取扱業者をめぐる問題点
結論から言えば、第2種動物取扱事業者を届出制ではなく、登録制にして規制の強化をすべきだという話になっているようだ。
例えば、譲渡のためのシェルターを有する動物愛護団体も第2種取扱事業者に含まれるが、飼養数の限界を超えても保護を優先するが故に多くの動物を受け入れ、その結果として劣悪な環境で飼養しているような事例もある。
届出の拒否や虚偽、検査の受け入れの妨害などは罰金の対象になっても、届出はしっかりと行い、かつ検査も受け入れたとしても劣悪な環境を理由に第2種動物取扱事業者の登録の取り消し等は出来ず、結果として活動そのものを規制することが出来ない状況になるわけだ。
他にも第2種動物取扱業者として届出をしているにもかかわらず実際には明らかに営利目的の活動をしていると思われる団体もあるようで、今後も継続した議論が望まれる点とのこと。
ここまでが第2種動物取扱業者についての内容になる。何度も読み返してしっかり理解を深めておく必要がある部分だ。
第3章 動物愛護法の課題
第3章は大きな話題となっており、現状を踏まえて動物愛護法の課題について多くの論点を上げている。細かい理解を抜きにして、向かうべきゴールだけが根拠なくあげられている場合は、まずは細かい理解をより進め自分なりのロジックを構築した方が良いと考えているため、この章については半分何となく読み流しながら何となく理解をした状態を目標としたい。
数値規制
数値規制に関する2019年法改正の概要
ここでは第1種動物取扱業者が遵守している環境省令の基準に関する問題点が指摘されている。
もとより第1種動物取扱業者の業種や業態は多岐にわたる。そのような多様な業種や業態に一律の環境省令で基準作りは難しいため、より細分化された明確な基準の設定が必要という指摘がされているようだ。
2019年の法改正で、このような議論をもとに飼養施設の管理、飼養施設に備える設備の構造および規模並びに当該設備の管理に関する事項等7項目が環境省令が定める遵守事項として具体的に明示され(動物愛護法21条2項)、特に犬猫の場合はこれら基準はより具体的なものでなければならないとされた。
数値規制に関する議論の状況
動物福祉に照らし合わせて厳格な基準を設けるべきだと訴える動物愛護団体が多くいる一方で、厳格な数値規制を行うことの妥当性や科学的な根拠といった点において不完全な領域もあるようで、今後より深い議論が求められる。
「海外の例」や「国際的なスタンダード」といったものもやはり具体的な科学的根拠がないままに、文化や風習、さらには商慣習や土地の制約も違う国内へそれらをどう適用していくのか、あるいは適用することができるのかを丁寧に議論していくことが望ましと思う。
今後の課題について
「アニマルベースメジャー」という考え方が言及され、その理念のもとに動物にとって良い成果を目指す考え方自体は否定する要素などないが、どこまで行っても「人間が考える動物にとってのより良い環境」でしかないのは否めないのだとすればこれらの行為が本当に動物のために行われているのかどうかは、厳しく判断をしていくべきだろう。
何がアニマルベースメジャーかどうか定義も根拠も曖昧のまま数値設定を優先すると、本末転倒なことになりかねないことに言及されており、この点についてはまさしくその通りだと思う。
適正飼育のための基準を根拠をもって焦らずにしっかりと決めていくこと、またその基準も海外からの輸入ばかりではなく日本の文化や風習に沿った独自のものを作っていく方が方向性としては遠回りでも正しい道を進めるのではないかと個人的には思ったりする。
緊急時の一時保護
一時保護の必要性と法的な問題点
劣悪な環境での飼育等、虐待ともとれる状況下にある犬・猫などは飼い主から引き離して保護したり、飼い主が状況を改善しないときには、新しい飼い主を見つけたりする方が望ましいといえる場合がある。
日本においては、動物は「物」として扱われる(民法85条)ため、飼い主が所有権を有し、自由に「使用」「収益」「処分」する権利を有する。法令の制限がある場合には所有権も制約はされるものの、ペットを飼い主から引き離して保護するためには、飼い主の権利を一時的にでも停止し、所有権を強制的に喪失させたりすることができる法律は存在しない。
上記のような理由から、現時点においてはペットがどのような状況下においても、飼い主の同意がないかぎりペットを一時的にでも保護したり、取り上げたりすることは容易ではない。
対応策
飼い主に問題がある場合に、犬・猫を一時的に保護し、新たな飼い主を探す等を行うためには新しい立法が必要になる。一方で、そのような立法がなされたとしても、実際に飼い主からペットを奪い取り、「動物のために」という他者の判断をはさんで、新しい飼い主に譲り渡すということが現実的に可能なのか、もっと言えば「可能であるべきなのか」は慎重な判断が必要ではないだろうかと個人的には強く感じる。
しっかりと犬・猫と向き合っている飼い主である限りは問題にはならないため、問題そのものが顕在化している時点で、ペットとの関係が崩壊している可能性が極めて高いといえるが、それでも権利の問題が発生する領域については中途半端に法体系を変えることが良いことだとは決して思わない。
実験動物の取扱い
現在の動物愛護法上の扱い
実験動物とは、動物を教育、試験研究または生物学的製剤の用その他の科学上の利用に供するために、研究施設等で飼育している動物、または実験用に繁殖・生産される動物を指す。
以前は保健所に引き取られた犬や猫や、有害駆除されたサルなども実験動物として用いられていた時代もあるそうだが実験動物も、動物愛護法上の「動物」であることにはかわりなく、命あるものであることに配慮して大事にしながら、人と動物の共生する社会を実現していこうという基本原則が適用される(動物愛護法2条)。
基本指針でも「動物愛護の基本は、人においてその命が大切なように、動物の命についてもその尊厳を守るということにある」とされている。実験動物でも、虐待や遺棄が禁止されていることに変わりはないものの、ペットのような終生飼養が基本となる家庭動物とは異なり、実験動物は苦痛を与えられたり、致死的利用がなされるため、以下で述べる3Rの原則のように、苦痛の軽減等に力点のおかれた規定がされている(動物愛護法41条)。また、実験動物の取扱業者は、動物愛護法上のと届出の必要な取扱業者から除外される(同法10条1項)。
これまでの動物愛護法改正の経緯
- 2005年動物愛護法改正で3Rの原則が動物愛護法の条文に組み込まれる
- 2006年環境相が「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」策定→実験動物を移送した動物実験について、文部省・厚生労働省・農林水産省の各省がそれぞれ動物実験等の実施に関する基本指針を策定→日本学術会議が「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」を策定
- 2012年の動物愛護法改正の際、このような体制で良いのか議論になったが、最終的に動物実験についての法改正はされなかったが、自主管理の実効性、国際的な規制の動向等による検証が求められた
- 2019年改正にあたっては、各論点につき議論はされたものの、改正には至らなかった。
日本では、行政機関による基本指針等のもと、各研究機関による自主管理体制で実験が行われている状況で、動物実験を直接規制する法律はない。
3Rの原則
動物実験は、客観的に見れば、意図的に動物に苦痛や痛みを与える行為だが、医学研究などの合理的な目的で行われ、かつ最小限の必要な範囲で行われる場合、動物愛護法の基本的なスタンスでは認められるとされている。このスタンスのもとで、動物実験の3Rの原則(3Rs:①Reduction:使用数削減、②Refinement:苦痛の軽減、③Replacement:代替法・動物を使用しない方法への置き換え)が世界的な基準となっており、例えばEUではEU指令によってこれらの原則が加盟国に対して拘束力を持つように規定されている。同様に、国際機関であるOECDやOIE(国際獣疫事務局)でも採用されている。
日本でも、動物愛護法41条において、3Rの原則について規定されているが、「できる限り」という表現が限定的であり、そのうちの①と③については義務ではなく、配慮規定となっている。このため、今後の課題として、より3Rの原則が遵守される体制の構築や、3Rの原則の一部を義務として規定することなどがあるだろう。また、後述するような各種制度の導入も検討課題となるだろう。
実験動物業者の登録制
現行法において、動物取扱業は一般的に登録制度の対象とされている。しかし、動物愛護法の第10条第1項において、犬、猫、猿などの実験動物業者はこの動物取扱業の対象から除外されている。このような除外規定に対して、合理性があるのかどうかについては議論の余地があり、実験動物生産業者を動物取扱業の対象に追加するべきかどうかについても異なる意見が存在する(中央環境審議会動物愛護部会動物愛護管理のあり方検討小委員会(第21回)の資料1)。
この議論は、実験動物の取り扱いに関する規制がどれだけ厳格であるべきか、またどのように適用されるべきかについての根本的な問題だ。動物の福祉と科学研究の進展をバランスよく考慮する必要があり、社会的な合意を得ることが難しい課題の一つといえる。制度の改善や変更を検討する場合、関係者や専門家の意見を含む幅広いステークホルダーとの協力が必要不可欠だろう。
実験施設の登録または届出制
現在、各省庁は異なる研究機関を指導監督しており、動物実験の実施機関の一元的な管理が行われていない状況。さらに、各省庁が策定した基本指針は単なる指針であり、強制力がないため、動物実験に関する規制は抽象的なものにとどまっている。動物愛護団体からは、不正な実験が内部告発されたり、動物実験計画書の書式が統一されておらず、不備が多いことなど、問題点が指摘されているようだ。実際に、ある大学の准教授が学長の承認なしに動物実験を行う事件も発生しており、自己監督が充分かどうかについての疑念もあり強制力のある規制を求める声もあるようだ。
国際的には、ヨーロッパやアメリカでは実験動物の取り扱いについて詳細に法律で規制されており、個人や施設に対する免許制度や査察が導入されている。これに対し、日本の自主規制は監督体制が不十分といえる。一部自治体では実験施設の届出制を導入しているが、今後も、動物実験に関わる施設や責任者の登録制度が重要な議論となりそうだ。
改正に向けて
実験動物業者への規制や動物実験施設の届出制に関する議論は、動物愛護法の改正のたびに取り上げられ、その過程でさまざまな提案が検討されてきた。例えば、2012年の改正では、民主党の動物愛護対策ワーキングチーム(WT)の骨子案には動物実験施設の届出制や3Rの原則の義務化に関する条文が含まれていたが最終的には削除された。
同様に、2019年の改正においても、実験動物の分野については議論が行われたが、改正が実現することはなかった。このようなテーマについても、様々な立場や意見が存在し、社会的な合意を形成することが難しいため、議論が継続的に行われ、関係者や専門家の意見を含めて十分な検討が求められている。
動物実験に関する規制は、動物の福祉と科学研究の進展をバランスよく考慮する非常に複雑な問題であり、様々な倫理的・科学的・法的要因が絡み合っている。今後も社会的な議論や科学的な進展に合わせて、法制度の改善や変更が検討されることだろう。
飼い主のいない猫の繁殖制限:地域猫活動
猫の引取り数
犬と猫の引取り数および殺処分数についてのデータを分析すると、動物愛護法の施行以降、着実に減少傾向が続いていることが確認できる。その中でも、2014年度における犬と猫の状況に注目したい。
2014年度のデータによれば、犬の引取り数は10年前と比較して約29%減少し、殺処分数も約14%に減少している。一方で、猫の引取り数は同じ期間で約41%減少し、殺処分数は約33%減少したものの、猫の引取り数が犬に比べて大幅に低く、殺処分数が猫に対して高い割合を占めていることがわかる。
さらに、猫の引取り数の内訳を見ると、2014年度のデータでは、所有者からの引取り数が1万6542頭であるのに対して、所有者不明の引取り数が8万1380頭と非常に多いことが分かる。特に、所有者不明の猫の中で幼齢の個体が6万1618頭と多く、その大部分が野良猫であると考えられる。
このような状況から、野良猫の繁殖抑制などを行うことが重要であり、そのために地域猫活動が注目されている。地域猫活動とはは、野良猫の捕獲・不妊去勢手術・飼いならす活動を通じて、野良猫の増加を防ぎ、地域共生の在り方を探る取り組み。このような活動が拡大されることで、所有者不明の猫の引取り数の減少や殺処分数の削減に寄与することが期待されている。
地域猫活動とは
地域猫活動は、野良猫問題に対処するための新たなアプローチとして注目されている。この活動は、野良猫を放置せず、不妊去勢手術を行って繁殖を抑制し、それを「地域の猫」として、地域住民との協力によって管理し、共生を図るものだ。地域猫活動は、環境省が発表した「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」でも有効な対策として紹介されている。
これまで、野良猫問題に対処するためにTNR(Trap-Neuter-Return)というアプローチが使われてきた。TNRは、野良猫を捕獲し、不妊去勢手術を施し、その後に野外に戻す方法で、この方法により、野良猫の増加を抑えることができる。
しかし、TNRの成功には地域住民の協力が不可欠であり、自治体の助成金だけでは限界がある。地域猫活動は、野良猫問題を地域全体の共通の課題として認識し、住民が協力して取り組むことを重視している。自治会や住民組織が地域猫活動のグループを結成し、野良猫の不妊去勢手術や管理、手術後は野外に戻し、餌やりの方法やルールを地域で決め、糞尿の掃除なども行うのだ。
この活動には、住民だけでなく、地域の行政機関も協力し、地域猫活動の普及や啓発、資金助成、住民と関係者の調整役などを担当することが期待されている。地域猫活動を通じて、野良猫問題に対する地域全体の意識が高まり、共生環境が整えられ、トラブルの防止にも寄与するとされている。このようなアプローチにより、地域の住民が野良猫の問題に理解を示すケースも増え、共生が促進されることが期待されているようだ。
条例による取組み
地域猫活動と餌やりに関連する条例についての議論は、地域の状況やニーズに合わせて慎重に進める必要がありそうだ。以下に、関連する観点と考慮事項をいくつか示してみる。
- 共生と調和:地域猫活動は、地域住民と野良猫との共生を促進するアプローチ。そのため、地域内で餌やりが行われる際には、地域住民が協力し、適切な管理や不妊去勢手術を受けた猫に限定された方法を確立することが重要。この点で、自治体が餌やりに関する基準を策定し、住民にルールを守るよう誘導する役割を果たすことは意義があるのかもしれない。
- 罰則の必要性:条例に罰則を含めるかどうかは検討が必要。罰則がある場合、不適切な餌やりを行った人々に対して法的な制裁を科すことが可能だが、一方で地域猫活動を進めようとする人々を遠ざける可能性もあるため、バランスを取る必要がある。
- 地域の特性:地域ごとに異なる特性や問題が存在するため、地域ごとに最適なアプローチを採用することが大切。一部の地域では、自治体が厳格な制約を設けることが効果的かもしれないが、他の地域では地域住民の自主的な取り組みが適切な場合もある。
- 地域猫活動の成果:地域猫活動の成果によって、野良猫の数が減少し、トラブルが軽減される場合、条例の必要性が減少する可能性がある。地域住民が自発的に餌やりと不妊去勢手術を行い、共生のルールを守ることが普及すれば、条例の役割は低減するともいえる。
総括すると、地域猫活動の普及と成果に合わせて、地域ごとに適切な対策を採用することが望ましい。また、地域住民と協力し、対話を重ねながら、共生を図る方法を見つけることが大切である。これによって、地域全体で問題解決に取り組む姿勢が醸成され、効果的な対策が実現するはずだ。
地域猫活動のこれから
地域猫活動の普及と成果は、野良猫問題の解決において非常に有益であり、住民の協力と地域コミュニティの強化に貢献しているようだ。この活動が拡大し、より多くの自治体と地域で実施されることは、野良猫問題を根本的に解決し、共生の道を切り開くのに役立つとっ考えられている。
以下に、地域猫活動の普及と発展に向けた重要な要点をいくつか挙げてみる。
- 行政のサポート:地域猫活動が広がるためには、行政のサポートが重要。自治体が動物愛護担当職員を配置し、地域猫活動を支援する枠組みを整えることは、地域猫活動の成果を最大化するために不可欠。また、助成金やリソースの提供、普及活動のサポートなども必要。
- 住民への啓発:地域住民への啓発活動も重要。地域猫活動の目的や利点を説明し、住民の理解を深め、協力を得ることが必要。地域のコミュニティイベントやワークショップを通じて、情報を提供し、関心を喚起することが役立つ。
- ボランティアの協力:地域猫活動はボランティアによって支えられている。地域の動物愛護団体や個人ボランティアと連携し、不妊去勢手術や餌やり、猫のケアなどを行うことで、地域猫活動を実現している。
- 協力モデルの確立:地域内でのルールや手順を確立し、地域住民と協力モデルを構築することが大切。地域の特性や問題に合わせて、最適なアプローチを見つけ、継続的なサポートを提供することが必要。
- データの収集と評価:地域猫活動の進捗状況を定期的にモニタリングし、評価することは、活動の改善に役立つ。野良猫の数やトラブルの発生頻度などのデータを収集し、活動の成果を示すことが重要。
地域猫活動は、共生社会の構築に向けた良い例ではある。地域住民、行政、ボランティア、動物愛護団体など、さまざまなステークホルダーが協力し、持続可能な解決策を見つけ出すことが、野良猫問題の克服に向けた鍵となっている。地域猫活動の成功例を共有し、より多くの地域で導入することで、より多くの野良猫にとって明るい未来を築く手助けとなるのかもしれない。
不妊去勢の義務化
不妊去勢手術の義務化については、様々な視点からの議論があり、実施の是非や方法については社会的にも複雑な問題となっている。以下に、不妊去勢手術の義務化に関連する主要な視点をいくつか示す。
- 倫理と動物福祉:不妊去勢手術の義務化を支持する主要な理由の一つは、動物福祉の観点からのもの。繁殖が抑制されることにより、野良猫や野良犬の数が減少し、これらの動物が劣悪な状況で飼育されたり、遺棄されたりするリスクが低減するという理屈だ。この観点からは、不妊去勢手術の義務化は動物の利益を保護するために有効であると主張されている。
- 財政的負担:不妊去勢手術の費用は、飼い主や飼育者にとって負担がかかることがある。義務化される場合、この費用の負担が議論の焦点となるだろう。一部の飼い主や飼育者には経済的に難しい場合もあり、(どのような経緯で経済的困難に至ったかは別にしても現時点で難しい状況に陥っている人を放置するわけにはいかないため)この点に対処する必要があるという前提ではあるが、「経済的に難しい」人がそもそも飼い主となることが許されるべきなのか?という点は別の論点としては成立するのかもしれない。
- 個人の自由:不妊去勢手術の義務化は、飼い主や飼育者の個人の選択や自由に干渉する問題でもある。個人の犬や猫の繁殖に関する権利や信念を尊重する必要があり、義務化の際にはそのバランスを取ることが難しい課題とされている。
- 効果の検証:義務化の効果を検証するためには、長期的なデータと研究が必要。繁殖数や野良動物の数にどのような影響を与えるのか、社会的な費用対効果を考慮する必要がある。
- 普及と啓発:義務化に先立ち、不妊去勢手術の普及と啓発活動が重要。飼い主や飼育者に対して、なぜ不妊去勢手術が重要であるか、動物の福祉や野良動物問題に与える影響について教育することは、義務化よりも優先されるべき課題。
最終的に、不妊去勢手術の義務化は、地域や文化によって異なる状況に応じて検討されるべきだと個人的には思う。倫理的、法的、経済的な側面からの検討を通じて、どのようなアプローチが最も適切であるかを決定するために、社会全体の議論と協力が必要で、普及活動や啓発活動により、飼い主や飼育者が自発的に不妊去勢手術を受けさせることが奨励されるべきであるのは間違いはないのだろう。それが不可となった場合のアプローチをより深く議論すべきであり、法制化や罰則化を推し進めるだけが解決策ではない。
動物取扱業者の適正化:登録制と許可制
現状
動物取扱業者に関する規制の強化や改正は、動物の福祉と保護を向上させるために重要な措置になる。一部の悪質な業者や虐待事件が存在し続けることは、社会的な問題であり、業界全体の信頼性にも影響を及ぼす。以下に、動物取扱業者に関連する規制の強化や改正についての考えを示す。
- 厳格な登録と監督:動物取扱業者の登録プロセスを厳格化し、定期的な監督を行うことは、不正規な業者の台頭を防ぐために不可欠。業者の運営実態や動物の状態に対する監査が重要であり、違反があれば適切な制裁を科すべき。
- 教育とトレーニング:登録された動物取扱業者に対して、動物のケア、衛生基準、行動学、動物福祉に関するトレーニングを義務化することが一つの有効な手段だろう。業者や従業員が十分な知識を持ち、動物の福祉を確保できるようにするためには重要だ。
- 取引の透明性:動物の取引に関する透明性を高め、消費者に対して情報を提供する義務を課すことは重要。動物の出所、健康状態、予防接種、適切な飼育方法などについての情報提供など。
- 虐待行為への厳罰:悪質な業者や虐待事件に対して厳しい罰則を設けることは、業界内での違法行為の抑止力となりえるが虐待行為が発覚した場合、速やかに行政手続きや法的措置を取ることとセットで考える必要がある。
- 業界団体の協力:業界団体は、業者の適正化や倫理的な標準の策定に対して積極的に協力すべきではあるが現実的には規制される側でもあるため骨抜きのルールが出来上がる可能性が高くなるだけの可能性も否定はできないかもしれない。業界内での自主的な規制や倫理規定の策定を奨励し、違反業者に対しては排除措置を検討することなども選択肢か。
- 法制度の見直し:動物取扱業者に関する法制度の見直しや改正も検討されるべきだろう。その他現行法の強化や不妊去勢手術の義務化について再検討し、現実的かつ実行可能な方法を模索する必要がある。
動物取扱業者に対する規制の強化は、動物の福祉を守り、業界全体の信頼性を高めるために重要な一歩だ。一方で、適切なバランスを保ちつつ、業者の合法的な運営をサポートする仕組みも検討されるべきだろう。
現行の動物愛護法の問題点
登録拒否、登録取消しの実態
動物愛護法における登録制度が、実際の業者の登録拒否や登録取消しの実績が極めて少ないことは、一部の問題業者や不適切な動物取扱業者の存在にも関わらず、十分に機能していない可能性を示唆している。これに対処するために、以下のような点に注意だろう。
- 監督と取り締まりの強化:登録制度の適切な運用には、動物愛護法を監督し、取り締まるための十分なリソースと人材が必要になり。地方自治体や動物愛護団体などが、定期的な立入検査や監視を行うことで、問題業者の特定と取締りが行われるべきだろう。
- 情報の透明性:動物取扱業者に関する情報は一般に公開されるべきで、消費者が信頼性のある業者を選択できるようなるのが望ましいかもしれない。業者の登録情報や違反記録はオンラインでアクセス可能にするのもよいだろうが、どのような情報をどのような目的で開示することが公平で透明性の保てる情報なのかは簡単ではないかもしれない。もとより、問題を起こす業者というのは、そのような障壁をどう掻い潜っていくかに長けているともいえ、それらには長けていないが誠実に、まじめに取り組んでいる小規模事業者が日の目を見るような情報開示であればなお望ましいだろう。
- 報告と告発の奨励:動物愛護法の違反に対する報告や告発を奨励、通報者の匿名性を保護するための仕組みを整え不正規な動物取扱業者を報告しやすくする仕組みが必要。
- 罰則の強化:動物愛護法に違反した業者に対する罰則を強化し、厳しい措置を科すこと。罰則が厳しくなることで、業者は法を順守するインセンティブが高まる。他方で、基準が高すぎると今度は遵守するためのコストが巡り巡って飼い主などに転嫁されるリスクはある。
- 業者教育と倫理規範:動物取扱業者に対する教育プログラムを強化し、業界内での倫理規範を設定することが業界の適正化に寄与する可能性はある。業者の運営実態を監視し、不正規な実態に対処することを必須とすると行政の人員も必要となり、行政では対処しきれずに特定団体に業務委託されるようなよくあるビジネススキームに陥らないことを期待したい。
登録制度の運用における不備を克服し、問題のある動物取扱業者を取り締まるための体制が整えられれば業界全体の信頼向上を図ることはできるだろう。また、公正かつ透明性のある登録制度は、業者と消費者の双方にとって有益であり、動物福祉にも寄与するだろう。
規制内容の不明確さ
規制内容の不明確さは、動物愛護法の効果的な運用を妨げる問題であり、特に動物取扱業者に対する基準が具体的でないことは、行政や業者自身にとっても混乱を招く可能性がある。例えば、具体的な数値基準や動物の最低のスペース要件が欠如していると、業者や監督機関が基準をどのように解釈すべきかが曖昧になり、法の適用が一貫性を持たなくなる。
また、具体的な基準が欠如している場合、不適切な繁殖施設や飼育環境が存在しても、法的に是正することが難しくなる。これは、動物の福祉に悪影響を及ぼす可能性があるため、改善が必要だ。
2019年の動物愛護法改正において、できる限り具体的な基準を設けるべきとの規定が新設されたことは、法律がより明確で実効的な規制を確立しようとする試みとして評価されているそうだ。具体的な基準を策定することで、行政と業者の双方が法令を理解し、適切に遵守できるようになり、動物の福祉向上に貢献することが期待されている。
ただし、具体的な数値基準を設定するには、各動物種に対して異なるニーズを考慮に入れる必要があり、業界の異なるセクターや状況にも対応できる柔軟性を持つ必要があるのも事実だろう。規制の詳細な策定には慎重な検討と利害関係者の意見を反映するプロセスが必要だ。
今後の検討の必要性
第1種動物取扱業者における適正化の方法については、登録制と許可制のどちらが適しているか、そして具体的な数値基準の設定についても議論が必要になる。許可制は、事前に行政が審査し、許可を与える必要があるため、業者の適正化をより確実に図る手段と言える一方で、登録制では、登録申請者が一定の要件を満たせば登録されるため、業者の数や品質管理に対する監督が難しくなる可能性が高い。
許可制に移行する場合、審査の方法や基準をどのように設定するかが重要となる。適正な基準の設定には、動物の福祉を確保しつつ、業者の運営に適したルールを策定する必要があるのだが業者によって状況が異なるため、柔軟性を持たせつつ、公平な審査を行うことが求められてしまう。要するに何をもって適正かを判断する領域を極めて慎重に、かつ同時に明確な根拠をもって定める必要があるということだ。
具体的な数値基準を導入することは、規制の明確化に大いに役立つと考えられる。数値基準を設定することで、業者や監督機関が明確なガイドラインに従って行動することが容易になり、不適切な飼育環境や管理方法に対処しやすくなるだろう。ただし、これらの基準を設定する過程で、様々な要因を考慮に入れ、バランスを取ることが必要になる。動物の種類や性格、業者の規模やリソースに合わせた基準が求められることこそが、まさに明確な基準設定を困難にする理由でもあるだろう。
今後の検討では、適切な制度の選択と具体的な基準の策定に向けて、動物愛護や業界の発展を促進する方法を模索する必要がある。また、検討には専門家や関係者の幅広い意見が参考にされるべきだが、あまり意見を集約しすぎると何も決められないのは明白なので、責任を取る権限と気概がある有力者が、まずは暫定でも数値を決めその後発生する膨大な諸問題を都度解決しつつ調整をしていく方が物事が前に進む可能性もあるのかもしれない。
自治体の収容施設
収容施設の役割
収容施設、具体的には動物愛護管理センターや保健所、動物保護施設など、犬や猫の引取りや保管、譲渡、殺処分などの役割を果たしている。これらの施設は、動物の福祉を保護し、野良動物や捨てられた動物に対処するために重要な存在となる。
以下は、収容施設の主な役割:
- 引取りと保管: 収容施設は、野良犬や野良猫、または飼い主によって引き取られた動物を受け入れ、安全に保管する。この過程で、動物の健康状態を確認し、必要な医療措置を講じることがある。
- 譲渡: 収容施設は、保護した犬や猫の譲渡先を探す役割も担う。
- 飼い主の探索: 収容施設は、飼い主が特定できる場合、動物を飼い主に返還する努力をする。失踪したペットや逃げた動物が施設に収容された場合、飼い主との再会を可能にするための手続きが行われる。
- 殺処分: 収容施設は、譲渡先が見つからない場合や、健康上の問題や行動上の問題などを理由に殺処分を行うことがある。しかし、多くの施設では、殺処分を減少させ、動物の生存率を高めるために積極的に譲渡プログラムなどを活用している。
- 健康管理: 収容施設は、収容された動物の健康管理を行う。これには予防接種、疾患の治療、絶育手術、食事管理、運動プログラムなどが含まれる。
- 啓発活動: 収容施設は、動物愛護に関する啓発活動を行うことがある。飼い主に対して責任ある飼育を促進し、動物虐待や遺棄を減少させるために情報提供や教育活動を行う。
収容施設は、地域の動物福祉に不可欠な役割を果たしており、動物愛護法や関連法規に基づいてその活動を行っている。動物愛護団体やボランティア団体も収容施設と連携し、動物たちの生活環境や福祉向上のために尽力している。
現状と問題点、今後の課題
自治体の収容施設に関連して、これまでさまざまな点が議論されてきたがその中で、2012年改正の際に問題となったのが、①収容施設の基準、②殺処分の方法、③引取りのルール。
収容施設の基準:
収容施設の基準に関しては、動物の福祉と安全を保障するために、具体的かつ一貫性のある基準を設けることが必要。この基準には、動物の適切な飼育環境、食事・水の供給、健康管理、運動の機会などが含まれるべきとされている。
また、収容施設の基準は、動物取扱業者の基準と調和し、一貫性のある基準体系を構築する必要があり、これにより動物の福祉が全国的に確保されることが望ましい。基準策定の際には、動物福祉の専門家、獣医師、動物愛護団体、行政機関などからの意見を織り交ぜ、包括的かつ科学的に設定されるべきだとされている。
殺処分の方法:
殺処分の方法については、動物の苦痛を最小限に抑えつつ、適切で人道的な方法を採用することが求められている。国際的な動向や最新の科学的知見に基づいて、殺処分の方法を改善し、標準化することが重要とされている。
また、殺処分を行う職員に対する適切な訓練やサポートが必要。精神的な負担を最小限に抑え、動物の殺処分が適切に実施されるよう配慮する必要がある。
引取りのルール:
引取りのルールは、動物の福祉と適切な管理を確保するために、明確で適切である必要がある。所有者や飼い主の情報提供と連携し、遺棄や虐待を防ぐための対策を含むべきだ。
引取りの拒否に関して、拒否の理由や判断基準が透明で明確になるようにすることが重要。適切な情報提供と協力を通じて、引取りの拒否が動物たちの福祉に悪影響を及ぼさないように配慮する必要がある。
引取りの拒否が増加する場合、遺棄や虐待の問題が生じる可能性があるため、これに対処するための方策を検討する必要が生じる。動物愛護団体や地域コミュニティと連携し、適切な飼養環境を提供できる方法を模索する必要があるだろう。
今後、これらの課題に取り組むためには、行政機関、動物愛護団体、専門家、社会全体の協力と連携が不可欠と言え、動物の福祉と安全を保護するために、改善策を継続的に検討し、実施していく必要がある。
ペットの高齢化
2012年の動物愛護法改正により、飼い主等の終生飼養責任が明確化された。しかし、近年、高齢化や認知症などにより飼い主が介護を充分に提供できない場合や、飼い主の病気や仕事による飼育困難な状況の増加が問題化し、このような課題に対処するため、老犬ホームや老猫ホームといった施設が登場した。
中央環境審議会の「動物愛護のあり方報告書」では、老犬ホームや老猫ホームに対する規制の必要性が議論され、2012年の法改正により、これらの施設が第1種動物取扱業者として届出制度の対象となり、同業者として規制を受けることになった。この規制の下で、動物の所有権が保持されたまま動物を保管し飼養する「保管」の形態と、所有権をホームに移転し終生飼養責任など全ての責任がホームに委譲される「譲受飼養」の形態が区別された。
現在は保管の形態が主流だが、今後は譲受飼養の形態が増加する可能性があり、責任の主体が明確になることで、飼い主の責任を果たすための一つの選択肢として重要性を持つと考えられる。ただし、老犬ホームや老猫ホームの施設にはさまざまなレベルが存在し、高額な費用を支払っても充分なケアが提供されないトラブルも発生しているようだ。老犬ホームや老猫ホームに関しても、具体的な使用基準を定めることが、将来の動物愛護法改正で検討されるべきポイントと言えるだろう。
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