私と犬のエピソード。

今まで動物病院でたくさんの動物とそのご家族と関わってきましたが、その中でも忘れられないわんちゃんとご家族がいます。

 
そのわんちゃんのお名前はクレちゃん。
クレちゃんは高齢のわんちゃんで、私が入ってすぐにお尻に悪性の腫瘍ができてしまいました。悩んだ結果、ご家族は治療はしないことを決めました。まだ新人で知識も少なかったので私がしてあげられることはあまりなく、お話を聞いて「一緒に頑張りましょう」と寄り添うことしかできず歯痒い思いをしたを覚えています。

 
クレちゃんは、亡くなるまでお爪切りなどのお手入れに定期的に通院してくれました。来る度に「クレちゃん頑張ってるね、偉いね。」と声をかけ、ご家族ともいろいろなお話をしました。

 
そして時は経ち、段々ご飯が食べれなくなって動けなくなって最期のときが訪れました。最期はご家族のご希望で安楽死になりました。安楽死の日はお休みの日で立ち会うことができませんでしたが、スタッフによるとご家族全員揃って診察室でお別れをしたそうです。

 
しばらくして、クレちゃんのご家族が新しいわんちゃんを連れて来院されました。

 
私はクレちゃんの最期のときに立ち会うことができなかったことをずっと悔やんでいて、ご家族がその後どうしているかも気になっていたので新しいわんちゃんを連れてきてくださったことがとても嬉しかったです。素直にその気持ちを伝えたら、クレちゃんのご家族が「先生のおかげで新しい子を迎えることができたんですよ。」と言ってくださり、獣医師をやっててよかったと心から思いました。

 
そしてその職場を辞める時、電話で辞めることを伝えました。クレちゃんのお母さんは「残念だけど先生のおかげでクレちゃんのお世話を頑張れたし新しい子を迎えることができました。」と言ってくださって、今でもこの言葉は忘れられません。獣医師として壁にぶつかったとき必ずクレちゃんとご家族のことを思い出してまた頑張ろうって思います。

 
知識や技術も必要だけれど、ご家族の話に耳を傾け寄り添うことがどんなに大切か学ぶことができました。
獣医療は治すだけではなくてどうしたらぺットのご家族が悔いなく一緒に過ごせるか、最期を迎えられるかを考えながら診療にあたることが大事だと思っています。

 
この経験があって今の私がいます。そして毎日の診察に生かされています。これからも獣医師としてペットとそのご家族のお手伝いをしていきたいです。