猫の妊娠、出産に立ち会ってきた獣医師が伝えたいこと「Dr.有希の猫エッセイ」

猫の妊娠期間は約2か月、お腹が大きいと人間が気づいた頃にはあと2週間とか、あと数日で産まれます。現在では不妊手術をして室内で飼育するのが一般的ですが、昔は不妊手術もせず外に出して飼ったり、野良猫にエサを与えるだけで、わざわざ捕まえて不妊手術をする方は少なかったように思います。

いま思えば不妊手術をすればよかった……。

私が子供の頃に飼っていた三毛猫ピーコは外に出ていましたので当然妊娠したことがあります。今思えば不妊手術をしていれば良かったのですが、ピーコがお年頃になったときはオス猫が毎日のようにラブコールに来ていました。

1匹ではなく何匹かにお誘いを受けるのですが、飼主から見てこのオスはボロボロに汚れているからイヤだとか、うちのかわいいピーコちゃんをお嫁にあげたくないとか、小学生の私と弟はお誘いに来るオスを見つけては追い払ったりしていました。それでも自然の摂理には逆らうことが出来ず、ピーコは妊娠しました。その時は初めて飼った猫の初めての妊娠だったので出産させてあげることになりました。

出産前日、ピーコはソワソワ。家中をウロウロしたり、私のベッドのシーツをバリバリにしたり、それはそれは普段では見られない行動でした。小学生の私は出産を見たくてしかたなかったけれど、結局夜中の出産だったので母が一人で立ち会いました。

箱入りで育ったワガママピーコは出産が怖かったのか、母にお腹をさすってもらったそうです。どんな猫でも出産は自分一人で行うのが普通だと思うのですが、ピーコはぜーんぶ人間の母に手伝ってもらっていました。
1匹目が産まれた時は羊膜を自分で破らないので母が破って取り出し、へその緒も母が縛りました。結局全部で5匹が無事に産まれました。朝目が覚めると母は疲れ果て、ピーコは授乳をしていました。新しい命が産まれ、とてもすがすがしい気持ちで登校したことを覚えています。

里親募集型猫カフェでの出産

うちの里親募集型猫カフェでも出産を経験したことがあります。妊娠後期に飼育放棄で捨てられたマルちゃん、猫カフェで無事に出産、育児をし、マルちゃん自身も里親さんにもらわれていき、幸せに暮らしています。

私の妹が拾ってきた猫スモールは、拾われた当時おっぱいが張っていました。子猫がいるはずだと探したのですが見つからず、きっと山で出産したけどイタチなどにやられてしまったのかなと家族で話していました。

スモールはすぐに不妊手術を受けたのですが、その後たまたま子猫を拾い、スモールが育ててくれました。自分の子供でもない子猫を育てるスモールの姿は感慨深いものがありました。不妊手術をして時間がたつとおっぱいは出なくなってしまいますが、スモールはその後何度も子猫の面倒を見ました。
スモールのように母性が強い猫もいますが、どの猫もそうとは限りません。子猫を放棄してしまう猫もいます。猫の場合はいずれも本能的なものと考えられます。

出産の話を書きましたが、現在では出来る限り猫ちゃんの不幸な出産は避けたいと考えています。
産まれてくる子猫たちが全て幸せに暮らせるなら不妊手術は必要ないかもしれませんが、猫は繁殖力が旺盛であっという間に数が増えますから、不妊手術なしで数をコントロールすることは出来ません。

産ませても全ての子猫に責任が持てる場合を除いて、不妊手術はすべきと考えています。昔は自然に繁殖していたのだから不妊手術などしないでもいいという人がいますが、世の中には猫が嫌いな人もたくさんいて、野良の子猫は捕まれば殺処分されてしまいます。

飼い猫が子猫を産んでも子猫だけ保健所で処分するという非道な人もいます。実際に捨てられる子猫は日本中で後を絶ちません。望まない妊娠を後悔するのではなく、そうならないよう不妊手術をするのが大切です。ひとつひとつの生命を大切に考えていきたいです。