うさんぽ日和 第3章

第一章より ここあ(雑種)ちろる(ネザーランドドワーフ)

3.日常に潜む危険~ここあ編

外もすっかり秋の色になりました。ミーンミンミンの音もいつのまにか消え、最近では帰りのチャイムと同時に辺りも闇に包まれます。夜は肌寒く感じますが、日中は人にとってもうさぎにとっても過ごしやすい時期になりました。まさに「うさんぽ日和」の季節ですね。今回はそんな「うさんぽ」に纏わるお話をさせて下さい。

 
「うさんぽ」といえば、楽しそうに草むらを駆け回る姿やお洋服を着てちょっとおめかしした姿をご想像されるでしょうか。それこそ、ちょうど昨日も家からすぐの公園でちょっとした人溜まりがあって、覗いてみるとダンディなお父さんとフリフリスカートのドワーフちゃんとのうさんぽ中でした。彼女は周りのギャラリーには目もくれず、慣れた足取りで広場を駆け回ります。その姿をみていると、私はいつも思い出すのです。楽しいうさんぽでも、細心の注意を払わなければいけないことを。

 
母方の秋田の実家は、自然が多く、お隣さんが何百メートルも離れているような、いわゆるド田舎と呼ばれる場所にありました。当時まだ小学生だった私は、相方のここあを連れて意気揚々とうさんぽに出掛けます。お気に入りの黄色いリードを携えて、その日もいつものようにふたりで畑を駆け回っていました。すると突然、ピタッとここあがその足を止め、これでもかと言うほどに目をひん剥き、大きな声で鳴き始めたのです。うさぎは声帯を持たないため、鳴き始めたという表現は正しくないのかもしれませんが、その声はまさにサルのような「キーキーキーッ」というとても甲高い声で、とてもじゃないですがあの小柄で愛らしい生き物から出る音ではありませんでした。そして次の瞬間、バネのように大きくジャンプして、まさに本能のままに走り出したのです。引っ張られた私は転倒したものの、幸いリードは固くここあが走り去って行くことはありませんでした。それから私の腕の中で息を荒げながらも、一時間ほどするとようやくいつもの穏やかな表情へ戻りました。後にも先にも、こんな声を聞いたのはこの時だけです。

 
うさぎは気分が乗ると「ぷぅぷぅ」鳴きます。怒りん坊は「ブッブッ」と足ダンをします。でも決して「キーッ」と鳴くのは正常ではありません。これは、命に係わる超危険信号なのです。自然の多い祖父母の家の周りには、恐らく天敵となる野生の動物の臭いがしていたのでしょう。この時は大事には至りませんでしたが、最悪の場合死に至るといわれています。都内でも、野良猫の多い地域やうさぎに適さない環境下でのうさんぽは控えましょう。また、うさんぽに限らず極度のストレスを感じる振り幅には個体差があるので、その子の性格に合わせた暮らしを提供できるように心がけましょう。ただし、わたしたち人間が過度に神経質になりすぎてはいけません。あくまでも慎重に、その子にとってのQOL(Quality of life)の向上を考えてあげることが重要なのです。