獣医師がアドバイス!長寿ネコはここが違う

犬と猫、もっと言うと人間で長寿のための秘訣は根本的には同じです。
犬の項でも述べましたが、生まれてから亡くなるまでの過程は、生まれた瞬間からの「老化」の過程であり、老化の過程は「身体中のゆとりを使い果たしていく過程」です。また、「老化」を身体の生理化学的な定義内の限局的な意味では「酸化」と言い換えることもできます。

猫は人間や犬などよりも、その交配の歴史的背景などが複雑に組み合わさり、特定の猫の種類に特定の致命的な病気が高確率で発生し、また、特定の臓器が早く老化しやすいなどの特徴があります。

猫の体で、老化しやすい臓器は?

猫を一度でも飼育したことがあれば聞いたことがあると思いますが、老化しやすい臓器の代表的なものは、腎臓です。
腎臓は血液中のタンパク質や筋肉代謝の有害な老廃物を取り除いて尿に捨てて血液を綺麗に保つ働きがある他、血液を作り出すホルモンを産生しています。この腎臓の機能の、老廃物を除去する時に必要なある種のタンパク質の働きが悪く、他のどの哺乳動物に比べても圧倒的に腎臓が早く老化しやすいのが猫です。

また、特定の人気のある純血種の猫は若齢から慢性腎不全になりやすく、繁殖に関する知識が乏しく近親交配の多かった時代に、ルーツの先端にいる祖先猫の遺伝情報が拡散された可能性も考えられていますが、解明には至っていません。

老化抑制のためにできること

現在遺伝子工学の医療分野への応用は想像のつかないスピードで進んでおり、さほど遠くない将来に、後天的な遺伝子への働き掛けで猫の腎臓病や心筋症などは治る病気になる可能性もあるのですが、残念ながら現在は予防をすることと、かかってしまってから1秒でも長く持たせる配慮をすることしかできません。

腎臓を例には挙げましたが、臓器全般の一般的な総論として、猫の場合も長寿の秘訣、老化の抑制には、必要以上に機能のゆとりを使わないように生活させること、酸化の逆の還元を行う作用のものを取り込ませることが有効です。

具体的にどうしたらいい?

具体的には適切な量の質の良い食餌と十分な水分を与え、適切な運動を確保してやり、たくさんの愛情を注いであげること、抗酸化作用のある食べ物を意図的に取り入れることです。

とはいえ、それは美味しいものをたくさん与えて甘やかすという意味ではなく、気難しく容易に好き嫌いでフードを食べなくなる猫だからこそ、病気になってしまった時に、有効な食事を食べてくれるように、あれこれおやつなどを与えて贅沢にしないなど「いつか病気になるだろう」という気構えでいることが猫では特に大切かもしれません。

知らないものに対しての欲求は湧きません。あれこれ教えてしまうことで、食餌に対して不満を抱きやすくなれば、結果的には生活の質を低下させてしまい、このストレスがまた何かの老化を促進します。私自身も自分自身へはとても甘い食生活を許しているし、甘やかしたい気持ちも本当によくわかるのですが、「長寿でいて欲しい」という観点でいうと、贅沢は禁物です。

そして、猫は犬よりも症状を隠す生き物なので、基本的には「様子を見」ない方が良いです。膀胱炎など軽度のなりやすい病気から閉塞に至って24時間以内に死亡しますし、消化管の機能的な閉塞などでいきなり急変することも多いのと、わかりやすい症状になるときは治療に反応できないほどの最終段階であることも少なくないからです。

最後に逆説的な話にはなるのですが、あまり神経質になりすぎないことも一つの秘訣かなと統計学的な話ではなく、獣医師としての臨床経験からの経験則として付け加えておきます。日頃から神経質になってあれこれネットで調べるよりも、愛猫と直に触れ合う時間を大切にし、ゆったりとした気持ちで暮らすことも、長寿にはとても大事なことだと個人的には強く思います。

満たされた気持ち、幸福な気持ちで放出されるホルモンには、老化を大幅に抑制し、還元作用があることがわかっています。
あまりピリピリと心配しすぎず、でもおかしいなと思ったらすぐに病院に行く、あれこれおやつを与えず良質なフードと水を与える、シンプルですが以上が長寿の秘訣です。参考になさってください。